中国に広がる日本の伝統、重慶に伝統工芸品直営店がオープン

(中国)

成都発

2019年11月29日

日本の伝統的工芸品のアンテナショップ「青山SQUARE」が、11月8日に重慶市にオープンした。同店は伝統工芸品産業振興協会が運営するギャラリー兼ショップで、経済産業省が指定する日本各地の伝統工芸品約200種類を取りそろえ、中国におけるPRと販路開拓に取り組む。

工芸品が生活に根付く重慶市

東京都青山に本店を構える青山SQUAREは、来場客の約3割が外国人であることから、伝統工芸品に対する外国人のニーズを捉え、海外でのPRと販路開拓に力を入れていた。重慶店はフランス・パリ店に続く海外2店舗目となる。中国初店舗を重慶市にオープンさせた理由について、店舗関係者は「人口が多く、生活に余裕のある富裕層が一定数以上いることから、北京、上海、重慶が候補地に挙がっていた。その中でも、重慶は古くから伝統織物、刺しゅう、扇子の生産が盛んな都市で、市民の暮らしに工芸品が根付いている」と述べた。

重慶市は、「質の高い発展によるハイクオリティーな生活の創造」を政策目標の1つに掲げており、市民生活の質的向上を重視している。こうした中で、同市では伝統文化の振興が生活の質の向上に寄与する重点項目として認識され、2018年には「重慶市伝統工芸振興計画」を定め、重慶市の伝統工芸の振興を図っている。重慶市の潜在性や政策により、日本の伝統的工芸品が受け入れられやすい下地があることも、今回の青山SQUAREの開店につながった一因といえる。

今後の期待として、店舗関係者は「工芸品を製造するのは日本の職人だが、各工芸品を文化として完成させるのは、使い手の中国ユーザーだ。日本と重慶の文化交流を促進させたい」と期待を述べた。

工芸品専門ECサイトも人気を博す

近年は中国の各都市で、日本の伝統工芸品を扱った展示イベントが多数開催されている。訪日中国人観光客の土産としても好まれており、秋葉原の免税電器店にも多数の伝統工芸品が陳列されている。

中国の電子商取引(EC)サイトでの販売も盛んだ。天猫(Tモール)や京東(JD.com)といった大手総合ECプラットフォームでの取り扱いはもちろんのこと、近年は工芸品専門のECサイトでも人気を博している。工芸品専門ECサイト大手の「東家」では3,000アイテム以上の日本製品が掲載されている。

日本企業の中国に対する位置付けは「生産拠点から消費市場」へとシフトしており、中国人の所得向上に伴い、消費される日本製品にも広がりがみられる。

写真 「青山SQUARE」重慶店内の様子(ジェトロ撮影)

「青山SQUARE」重慶店内の様子(ジェトロ撮影)

(寺田俊作)

(中国)

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