アジア日系企業の景況感が低水準に、事業拡大意欲も低下、2019年度日系企業調査で明らかに

(アジア、オセアニア)

アジア大洋州課、中国北アジア課

2019年11月21日

ジェトロが8~9月に実施した「2019年度アジア・オセアニア進出日系企業実態調査」によると、米中貿易摩擦の激化と世界的な景気減速懸念の中で、ほぼ全ての国・地域で足元の景況感が悪化し、事業拡大意欲が低下していることが分かった。特に、北東アジア(中国、韓国、台湾、香港・マカオ)での落ち込みが顕著だった。

2019年の景況感を示すDI値(営業利益が前年比で「改善」した企業の割合から「悪化」した企業の割合を引いた数値)は3.3ポイントとなり、2018年調査の23.6ポイントから大幅に低下した(図参照)。

図 各国・地域のDI値(景況感)

2019年の営業利益見込みが悪化する理由として、「現地市場での売り上げ減少」を挙げた企業が61.4%(前年比15.7ポイント増)と最も多かった。とりわけ、北東アジア地域では10年ぶりに全ての国・地域のDI値がマイナスに落ち込んだ。そのうち、韓国(15.7ポイント減)の落ち込みがもっとも大きく、台湾(8.9ポイント減)、香港・マカオ(8.4ポイント減)、中国(3.8ポイント減)が続いた。米中貿易摩擦を背景とした、中国経済減速などによる「現地市場での売り上げ減少」が主に影響したとみられる。

今後1~2年の事業展開の方向性についてみると、全体では「拡大」とする企業の割合は48.9%となり、2018年(55.1%)から6.2ポイント低下し、初めて5割を切った。インドネシアを除く全ての国・地域で、前年に比べて拡大意欲が低下した。中国では「拡大」が4年ぶりに低下(5.5ポイント)し、43.2%となった。ASEANでも「拡大」が5.9ポイント低下して51.5%となるなど、5割を割り込んだ2009年以来の低さとなった。

一方、2020年の景況感を占うDI値は29.5ポイントと、2019年(3.3ポイント)よりも改善する見込みとなっている。ただし、韓国では1.5ポイント、香港・マカオでは11.6ポイントと、相対的に厳しい景況感見通しとなっている。

通商環境の変化によるマイナス影響、北東アジアで3割以上

米中貿易摩擦など通商環境の変化の影響は、中国など北東アジアで相対的に高かった。ただし、具体的対応をとった企業はわずか1割だった。在アジア・オセアニア日系企業は、全体として中国や米国からの調達、両国向け輸出の割合が小さい。影響を受けたと回答した企業のうち、実際に「生産地の移管」「調達先の変更」「販売先の変更」を実施した企業(予定を含む)は1割にすぎず、多くの企業は「変更なし」と回答した。

マイナスの影響では、中国などの北東アジアが3割以上と相対的に高く、ASEANなどの企業では2割以下だった。マイナスの影響の主な要因は、(1)米国向けに輸出する中国の外資企業や地場企業への販売不振、(2)中国向けの輸出企業への販売の落ち込み、(3)中国経済減速の影響の広がり、などとみられる。

調査結果の概要は、ジェトロの「2019年度アジア・オセアニア進出日系企業実態調査」(2019年11月)で閲覧できる。

(アジア、オセアニア)

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