政府が利下げ・貸し出し促進策を推進

(トルコ)

イスタンブール発

2019年11月15日

トルコのベラト・アルバイラク国庫・財務相は10月31日、利下げがインフレを高進させることはなかったと強調し、国有銀行が法人向けのローン金利を11.0~13.5%に引き下げるキャンペーンを実施すると発表した。トルコの政策金利は、統計上のインフレ低下もあり、10月24日に14.0%まで引き下げられたとはいえ、なお高水準にある。こうした中、政府は国有銀行を通じて法人と消費者向けの貸出金利を低く誘導し、景気を下支えしている。また、消費者向けに10月1日付で、国有銀行が自動車ローン金利(国産新車限定)を7%近くまで引き下げたのもその一環だろう。この結果、10月の自動車売り上げ台数PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)は前年同月比で約2.3倍と急増している。

欧州復興開発銀行(EBRD)は、同行の2019年のトルコへの投資額が10億ユーロに達するとの見解外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますを示しているが、同行を含めて外資や民間銀行はリスク回避のため、融資先としてトルコ国内で操業する外資系などの優良企業を選好している。その背景には国有銀行を通じた政府の貸し出し促進策の流れの中で、外資を含めた民間銀行も顧客の流出を恐れて、低金利での融資を余儀なくされており、貸付金利と政策金利との間で逆ざやが発生し、銀行側が損失を抱える事態が進行していることがあるといわれる。トルコ銀行規制監督庁(BRSA)によると、銀行部門の不良債権比率も7月段階で6.3%に拡大PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)している。

中央銀行が進めている政策金利の引き下げは、物価統計の数値の改善(10月の消費者物価上昇率は前年同月比8.55%に低下外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)を根拠にしているが、物価の実勢を反映していないとの懸念もあり、投機筋の攻撃に弱いとみられている。また、預金のドル化も急速に進んでおり、こういった中で銀行部門にコストを負わせ低金利を誘導する政策は、銀行部門の足元をすくい、金融危機の素地を作り上げる恐れもあると懸念する向きもある。

(中島敏博)

(トルコ)

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