S&P、ギリシャの外貨長期債務格付けを引き上げ

(ギリシャ)

ミラノ発

2019年11月06日

米国の民間格付け会社スタンダード・アンド・プアーズ(S&P)は10月25日、ギリシャの外貨建て長期債務格付けを「B+」から「BB-」に1段階引き上げたことを発表した。また、ギリシャ政府が引き続き経済成長と財政の持続性を牽引する構造改革を実行すれば、今後12カ月の間に再度格上げをする可能性を示唆しており、今後の見通しも「ポジティブだ」としている。

S&Pは発表で、ギリシャの主要貿易パートナーであるユーロ圏の景気停滞がギリシャの輸出に影を落とすとしながらも、2019年から2022年までの3年間にギリシャの平均経済成長率は2.5%をわずかに上回るとの見通しを示している。消費の拡大や投資を後押しする経済政策が内需を押し上げることなどが理由だ。

また、今回引き上げに至った事由として、ギリシャの雇用が2022年にかけて年平均2%ずつ拡大する見通しであることや、7月に誕生した新政権が家計と企業の税負担軽減や金融機関が抱える不良債権の削減に努めるなどの経済政策を打ち出していることなどを挙げている。

しかし同時に、S&Pは、ギリシャ経済・社会における製品・専門的サービスの競争力が依然として弱いことや、破産申請手続きが複雑であること、司法の非効率性、契約履行が期待できない点などの改善点も指摘している。

ギリシャでは、8月末に資本規制の完全撤廃が議会で可決され、過去の金融危機から徐々に回復の兆しを見せつつある(2019年9月12日記事参照)。新政権の政治手腕や今後の経済動向に注目が集まる。

(井上友里、山崎杏奈)

(ギリシャ)

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