スタートアップ大型イベント「ディスラプトSF2019」、米サンフランシスコで開催

(米国)

サンフランシスコ発

2019年10月25日

テックメディアのテッククランチは10月2~4日、年次のテックスタートアップイベント「ディスラプト・サンフランシスコ(SF)2019」をサンフランシスコ市で開催した。最も出展数が多かった分野はSaaS(ソフトウエア・アズ・ア・サービス)で59社が参加した(注1)(表参照)。

表 ディスラプトSF出展数上位3分野(2017~2019年)

ジェトロが出展を支援したジャパンパビリオンでは、日系企業12社が出展した。JETRO Innovation Program(JIP)採択企業として参加したストローリー(Stroly、本社:京都府)は、デジタル化したイラスト地図をGPSに連動させて、元のイラスト地図上に位置情報を加えたり、個別に発行されるURLを利用しQRコード配布したりすることで、より多くの情報とともにオンラインで地図を開けるサービスを提供する。デジタル地図を利用した人の動きのデータから行動分析も可能だ。地図技術は世界のどこでも活用できるという特徴があることから、同社は今回のディスラプトSF以外にも、海外の展示会やテックイベントに積極的に出展している。テキサス州オースティンで毎年開催されるテクノロジーとエンターテインメントの祭典「サウス・バイ・サウス・ウエスト(SXSW)」では、2019年公式マップとして同社の技術が採用された。また同イベントのピッチコンテストに唯一の日本企業として参加した。そのほか、今回のジャパンパビリオン出展企業からは、「サービスに対するフィードバックが得られた」「資金調達先の候補と面談ができた」といった感想が寄せられた。

写真 ストローリーの明主那生コミュニティー・マネジャー(ジェトロ撮影)

ストローリーの明主那生コミュニティー・マネジャー(ジェトロ撮影)

写真 ディスラプトSFでブース来場者と話す明主マネジャー(ジェトロ撮影)

ディスラプトSFでブース来場者と話す明主マネジャー(ジェトロ撮影)

写真 ジャパンパビリオンの様子(ジェトロ撮影)

ジャパンパビリオンの様子(ジェトロ撮影)

写真 ジャパンパビリオンの様子(ジェトロ撮影)

ジャパンパビリオンの様子(ジェトロ撮影)

テクノロジーとプライバシー保護の関係をめぐる議論も

著名なテック企業のトップや、ベンチャーキャピタリストなどが登壇し、テーマに沿って行うトークセッションでは、期待されるテクノロジーの今後や発展についてだけでなく、テクノロジーやテック企業が社会へ与える影響、プライバシー保護などに関するトピックも取り上げられた。俳優で、クリエーター向けプロダクション・プラットフォームのスタートアップ「ヒットレコード(HitRecord)」の創業者でもあるジョセフ・ゴードン-レビット氏はセッションで、「(ユーチューブやインスタグラムのビジネスモデルは)『無料サービス』と引き換えに集団監視を行い、アルゴリズムを駆使して利用者の利益や創造性のために最適化されるのではなく、広告主の目的に最適化されている」と批判した。そのほか、エシカル・テック(注2)のスタートアップ創業者らがテクノロジー企業の従業員や社会に対する責任や義務などについて話すセッションも行われた。セールスフォースのマーク・ベニオフ最高経営責任者(CEO)は自身のセッションで、「全米共通のプライバシー法が必要だ(注3)。そうでなければ、プライバシー法のパッチワークになってしまう。政府は今こそ介入すべき」と述べた。

写真 エシカル・テックについてのセッションの様子(ジェトロ撮影)

エシカル・テックについてのセッションの様子(ジェトロ撮影)

(注1)国別パビリオンに出展した企業の分野を除く。

(注2)明確な定義はないが、テクノロジーの発展とともに浮かび上がるプライバシー問題や倫理的課題に配慮したテクノロジーやテック企業、または社会における倫理的課題の解決を目指すテクノロジーやテック企業を指す。

(注3)カリフォルニア州では10月11日に消費者プライバシー法(CCPA)が成立した。CCPAへの対応に関しては2019年6月6日付地域・分析レポートを参照。

(田中三保子)

(米国)

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