大統領が議会解散を宣言、議会は大統領職の停止を可決

(ペルー)

リマ発

2019年10月04日

ペルーのマルティン・ビスカラ大統領は9月30日交付の大統領令(165-2019-PCM号)で、国会の解散を宣言した。原因として大統領は、同日にサルバドール・デル・ソラール・ラバルテ首相が提出した内閣信任決議案が否決されたためとしている。同決議案は2017年9月にも否決されており、憲法第134条では、国会任期中に2度否決された場合、大統領はその国会の解散権限を得ると規定されている。新たな国会議員の選出については、2020年1月26日に実施することが大統領令に明記された。それまでは各政党の代表で構成される常任委員会が国会の最低限の活動に従事することになる。

解散宣言の背景には、7月28日に大統領が示した自身ならびに国会の任期短縮案に関る議会側との攻防がある(2019年8月6日記事参照)。議会は任期短縮案を9月26日に否決するとともに、憲法裁判所の判事7人のうち任期満了を迎える6人の選出を野党側に有利なかたちで進めていた。これに反発したビスカラ大統領は、憲法裁判所の判事選出の不透明性を理由に、選出方法の見直しを行うため、内閣信任決議案を9月30日の判事選出投票直前に提出した。しかし、議会は投票を継続し判事1人を選出したことから、ビスカラ大統領はこれを同決議案の否決と判断した。判事選出後に議会は内閣信任決議案を承認したが、ビスカラ大統領は前述の憲法134条を根拠に議会解散を宣言。

これに対して、議会は解散令を違憲として、ビスカラ大統領を「一時的不適格」を理由に1年間の職務停止案を可決し、その間の臨時大統領としてメルセデス・アラオス第1副大統領を選出した。アラオス氏はその場で就任の宣誓を行い、米州機構に対してビスカラ大統領による議会解散が違憲であり、解決のための仲介を依頼する考えを示したものの、10月1日夜には辞任する意向をツイッターで発表した。米州機構は10月1日のプレスリリースで、今回の問題の解決権限はペルー憲法裁判所にあるとし、ビスカラ大統領による議会の選挙日公示と国民に委ねる姿勢を評価するコメントを発表した。

多くの国民は大統領への支持を表明している。さらに、軍部や警察も支持を即日表明。全ての地方自治体で組織する地方自治体全国議会も支持を表明した。一方で、ペルー経団連(CONFIEP)のマリア・イサベル・レオン会長は、混乱によるビジネスへの影響を懸念し、解散宣言不支持を表明しており、収束の見通しが立たない状況が続いている。

(設楽隆裕)

(ペルー)

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