ビスカラ大統領、2021年の総選挙の前倒し法案を発表

(ペルー)

リマ発

2019年08月06日

ペルーのマルティン・ビスカラ大統領は、独立記念日の7月28日、国民向けの国会演説で、自身ならびに国会議員の任期を1年短縮する憲法改正法案を提出することを発表した。また、法案が議会で承認された場合、その後国民投票を実施することを示唆した(表参照)。

その背景として、ビスカラ大統領は2018年から進めている政治・司法改革についての議会との対立を挙げている。対立が顕著な例として、国会議員の犯罪免責規定の改正がある。当初は、容疑がかかった時点で最高裁判所での審議に移される内容だったが、7月25日、憲法委員会は45日間の議会内での審議の後、結論が出ない場合にのみ憲法裁判所に移管するとの修正を行った。これに対してビスカラ大統領は、実際に汚職で起訴されながらも、判決が出る際に逃亡して現在も行方不明の野党議員の事例を挙げ、国会議員というだけで拘留や起訴ができないのは理不尽だと訴えた。

7月31日に提出された「大統領の再任禁止・総選挙前倒し憲法改正法案」PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)によると、現在の大統領と副大統領の任期は2020年7月28日、国会議員とアンデス共同体議会選出議員は同年7月26日までとしており、それに伴う対象者全ての選挙は2020年4月の第3日曜日(4月19日)に統一的に行うと定めている。それぞれの任期については、2020年7月の就任から5年間(2025年7月まで)とされている。また、選挙は現選挙基本法が定める選挙公示日(選挙の270日前)についても例外的に別途調整するとしており、選挙にかかる経費も2019年度予算の範囲内で実施することとしている。

これに対して、野党側からはビスカラ大統領の退陣を求める声と、賛同の意見が乱立しており、国会の審議に影響するのは必至だ。

経済界からは、マリア・イサベル・レオン・ペルー経団連(CONFIEP)会長や、ヨランダ・トリアーニ・リマ商工会議所(CCL)会頭は今回の発表に関し、先行きの不透明感から、投資機会や雇用の損失による経済成長の停滞を懸念する声が相次いだ。

ビスカラ大統領による荒療治が功を奏すか、8月から9月にかけての国会での審議に注目が集まっている。

表 総選挙前倒しスケジュール

(設楽隆裕)

(ペルー)

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