スタートアップ「ユニム」、ロシア初のデジタル病理診断システム開発

(ロシア)

モスクワ発

2019年10月28日

デジタル画像を用いた病理診断(デジタルパソロジー)(注1)を行う検査所が2018年1月にロシアで初めて開設された。デジタルパソロジーは日本でも2018年度の診療報酬改定で新たに診療報酬の対象となるなど、近年注目されている診断技術だ。検査所を開設したロシアのスタートアップ「ユニム(UNIM)」はデジタルパソロジーに加え、病理診断検査所をIT技術で管理するシステムを開発している。

同社は10月30日~11月1日に千葉県柏市で開催される国際的なスタートアップ・イベント「アジア・アントレプレナーシップ・アワード(AEA)2019」に参加(注2)する。参加を前にマリヤ・コズロワ営業ダイレクターとミハイル・ゲニス最高戦略責任者(CSO)に話を聞いた(10月7日)。

写真 AEA2019に参加するマリヤ・コズロワ営業ダイレクター(右)とミハイル・ゲニス最高戦略責任者(ジェトロ撮影)

AEA2019に参加するマリヤ・コズロワ営業ダイレクター(右)とミハイル・ゲニス最高戦略責任者(ジェトロ撮影)

(問)貴社のソリューションの特徴や優位性は。

(答)われわれはデジタルパソロジーだけでなく、病理診断検査所をIT技術で管理する「検査所情報システム(LIS)」を独自に開発している。LISにより病院からの病理診断の受け付け、病理医への診断依頼、各案件の進捗管理が可能になる。さらに、検査機器の状態管理や検査薬などの在庫管理、売り上げやKPIなどの経営情報の管理も同じシステム上で行うことができる。検査所全体の業務管理をデジタル化している事例はほかにない。

(問)ビジネスモデルは。

(答)2つある。1つは病院や研究施設、患者からの病理診断の受注。既に毎月3,500人以上の患者の病理診断を行っており、毎月15万ドル以上の収益が出ている。2つ目はLISのソフトウエアライセンスの販売。公立または民間の病理診断検査所に当社のLISを導入することで、医師の作業負担軽減や検査所運営の効率化、ひいては収益の向上につながる。今後はロシアだけでなく、海外展開も視野に入れて市場調査を進めている。

(問)日本市場への展開や日本企業との協業への関心は。

(答)日本の病院への当社ソフトウエアの展開、医療機器メーカーや製薬会社との技術提携に関心がある。他方、まずは日本の医療市場についての情報収集からと考えており、今回のAEA2019で自社のソリューションをPRし、反響をみたいと考えている。

(注1)病理組織標本を専用のスキャナーでデジタル画像化する技術。遠隔病理診断や人工知能(AI)を用いた病理画像の自動解析を可能にする。

(注2)ロシアからはユニムのほか、ワーデンマシナリー(AIベースの映像分析システム開発)(以上、ジェトロ推薦)、モトリカ(医療・ロボティクスの研究開発)(ロシアのイノベーションセンター「スコルコボ」の推薦)が参加する。

(戎佑一郎)

(ロシア)

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