日本や欧州大企業と現地スタートアップをつなぐオープンイノベーションイベント、米サンフランシスコで開催

(米国)

サンフランシスコ発

2019年10月11日

ジェトロは9月25、26日に米国サンフランシスコで開催されたスケールアップ・サミット外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます(主催:マインド・ザ・ブリッジ、以下MTB)に、イタリアの大手電力会社エネルや欧州のイノベーション・起業家養成機関EITデジタルなどとともに共催機関として参加した。スマートシティーやトラベルテック、デジタルコンストラクションなど6つの分野で、世界から集まった大企業41社とスタートアップ企業63社のマッチングを行った。

MTBが9月に発表した調査レポート(2019年10月15日記事参照)によると、ベイエリアにイノベーション拠点を置く大企業など222社のうち、76社はコーポレートベンチャーキャピタル(CVC)機能を有しており、70社は商品開発のためのプロトタイプ開発や業種別の調査チームを抱えるR&D機能を兼ね備えている。今回のイベントは、これらの企業と米国をはじめとするスタートアップとの協業促進を目的に開催された。

日本からは建設、商社など計8社が参加した。参加した商社は「業種が特定されており、(参加企業が)事前にニーズに基づいて抽出(ソーシング)されているので、(協業相手となる候補を)非常に効率的に探すことができた」とコメントした。ベイエリアの日系大企業はスタートアップとの協業から多くのことを学んでおり、やみくもに多くの企業に会うのではなく、本社側のニーズをしっかり把握した上で、スタートアップにコンタクトするケースが増えている。

マッチングイベントに先立って開催された「シリコンバレーと世界で変わるCVCの顔」と題したパネルディスカッションでは、トヨタAIベンチャーズのリエゾン・パートナー兼VPコーポレート・ディベロップメントの小早康之氏が登壇した。トヨタAIベンチャーズは2017年の設立以来、既に23社に投資、2019年5月には第2号ファンドの立ち上げを発表する(2019年5月20日記事参照)など、積極的に活動する日系CVCの1つだ。小早氏は「本社はファイナンシャルリターンよりも協業やシナジー効果を重視するが、CVC(トヨタAIベンチャーズ)はスタートアップと同じ志を持ってファイナンシャルリターン(スケールアップ)を求めなければいけない」として、スタートアップと目的を共有する必要性を説いた。

前述のMTB調査によると、外国企業別にCVCとしてのベイエリア地域への出資実績(2015年~2018年)をみると、出資金額で中国(160億ドル)、ドイツ(58億ドル)を抜いて日本(249億ドル)が1位となっている。スタートアップの目的の多くはM&AやIPOなどのエグジットだ。今後も日系企業がスタートアップを買収する動きが加速すると見込まれる。

写真 スケールアップ・サミットの様子。トヨタAIベンチャーズの小早氏(写真中央)(ジェトロ撮影)

スケールアップ・サミットの様子。トヨタAIベンチャーズの小早氏(写真中央)(ジェトロ撮影)

(樽谷範哉)

(米国)

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