シリコンバレーの企業のイノベーション拠点数、日系企業がトップに

(米国)

サンフランシスコ発

2019年10月15日

サンフランシスコに拠点を置き、イノベーション・アドバイザリー・サービスを提供するマインド・ザ・ブリッジ(Mind the Bridge、以下MTB)は9月25日、ベイエリア(注1)でイノベーション活動を行う企業に関する調査レポートを発表した。調査対象は、フォーブス・グローバル2000(注2)とフォーチュン・グローバル500(注3)に選出された大企業など。MTBによれば、現在、特に大企業の間でテクノロジー分野への投資が活発で、例えば、フォーチュン100(注4)に選出された企業の77%がベンチャーキャピタルに投資し、52%がコーポレートベンチャーキャピタル(CVC)を持つという。

同調査レポートによると、ベイエリアにイノベーション拠点(注5)を持つ企業222社のうち、日系企業は52社と全体の約25%を占め、米国(39社)、フランス(22社)、ドイツ(20社)などを抑えて首位となった(図1参照)。

図1 ベイエリアにイノベーション拠点を有する企業数(国別)

日系大手企業の進出が増加してきた2015年以降、その多くは情報収集を目的にしており、スタートアップとの協業が進まない状態にあった。大手企業とスタートアップとの企業文化の違いや、現地イノベーション拠点と本社との意識の差などが、その要因とされる。しかし最近では、日系企業の活動が単なる情報収集ではなく、出資や契約など、本社を巻き込んだかたちの実態を伴ったビジネスに変化してきているともいわれる。

MTBの調査によると、外国企業別のCVCとしてのベイエリア地域への出資実績(2015~2018年)において、出資金額で中国(160億ドル)、ドイツ(58億ドル)などを抜いて、日本(249億ドル)が1位だった(図2参照)。出資金額は、ソフトバンクによるウーバー・テクノロジーズへの出資などの大型案件が牽引したとみられるが、取引件数でも中国(158件)、英国(90件)などを抜いて、日本(202件)が1位となった(図3参照)。同調査結果はベイエア地域において、スタートアップとの協業手段として出資する企業の中で、日系企業の存在感が大きいことを示している。

図2 ベイエリアにおけるスタートアップへの投資額(2015~2018年、国・地域別、米国を除く)
図3 ベイエリアにおけるスタートアップへの投資件数(2015~2018年、国別、米国を除く)

(注1)サンフランシスコ、シリコンバレーを含む、近郊の都市を含めたサンフランシスコ湾の湾岸地域の総称。サンフランシスコ、サンマテオ、サンタクララ、アラメダ、サンタクルーズ郡の一部が含まれる。

(注2)フォーブスが売上高、利益、資産、時価総額を基に世界のトップ2,000社をランキングしたもの。

(注3)フォーチュンが売上高を指標に世界のトップ500社をランキングしたもの。

(注4)フォーチュンが売上高を指標に、米国のトップ100社をランキングしたもの。

(注5)ローカルエコシステムの情報収集、インキュベーション、アクセラレーション、戦略的協業を目的としたラボ施設、プロトタイプや研究者獲得を目的とした研究開発(R&D)センター、出資機能を兼ね備えたコーポレートベンチャーキャピタル(CVC)オフィスなど。少なくとも1人以上のフルタイム駐在員をイノベーション目的に設置している拠点が対象。

(樽谷範哉)

(米国)

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