訪ロ査証体制の簡素化明記、連邦政府の2035年までの観光戦略

(ロシア)

欧州ロシアCIS課

2019年10月11日

ロシア連邦政府は9月20日、2035年までのロシアの観光発展戦略を承認した(2019年9月20日付連邦政府指示第2129-r号)。戦略は外国人を含めた国内観光の発展に向けたもので、観光関連のインフラ整備、国内・国際観光市場での品質の高い競争力ある観光プログラムの開発とプロモーションなどを目的とし、経済発展省が策定した。

戦略にはロシアの観光産業の現状認識と課題が記載されている。2017年の訪ロ観光客は2,439万人、対人口比率は17%で、世界的な観光大国のスペイン(1億2,168万人、2.61倍)、フランス(2億737万人、3.09倍)に遠く及ばず、カナダ(3,100万人、84%)と比べても少ないとしている。その理由として、他国に比べ旅費に占める国内移動費の高さ(ロシア40%、米国16%、ドイツ29%)、外国市場におけるロシアのイメージの悪さ(安全でないというイメージ、言語の壁、地政学的問題の存在)、入国ビザの取得の煩雑さなどを挙げている。

これらの課題に対して、観光インフラ、基幹輸送インフラ(空港・輸送ハブ、連邦道路、橋、主要都市の迂回路、鉄道、水路)など整備・品質向上、リスクに関する情報提供強化、観光産業従業員の言語教育強化などを行うとしている。

外国人にとって、訪ロ観光の大きな障害となっている査証体制の改善については、6月12日付大統領指示第Pr-1069号に基づき、2021年1月1日から16日間を限度の観光や業務、人道などを目的とした入国に、電子ビザを適用する措置を講じると記載されている。さらに、観光ビザの発給の簡素化、査証免除渡航に関する政府間協定の締結(グループでのビザなし渡航、ビザフォームの簡素化、国境隣接地域の住民の相互訪問手続きの簡素化)なども進めるとしている。

上記のほか、観光戦略には、ロシアの地方の自然、文化、民族の多様さなどを勘案したプログラムや特定種類のプログラム(児童用、文化認識、山岳スキー、クルーズ、エコツーリズム、MICEなど)の開発、人材育成・教育、投資魅力度の向上、観光プログラムの需要喚起・プロモーション・認知度と手ごろさの向上への措置、法令整備、デジタル技術の導入、統計データ収取・加工・分析などの実施を明記している。

(齋藤寛)

(ロシア)

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