2020年7月30日から長期出向者へのフランス労働法の適用を義務化

(フランス)

パリ発

2019年10月16日

フランス国外からフランスへサービス提供のため長期派遣される従業員に対し、2020年7月30日から、フランスの労働法の適用が義務付けられる。賃金や社会保障制度が異なる外国からの派遣労働者によるソーシャルダンピングを防ぎ、派遣労働者の権利を保護するための措置として導入されたEU指令2018/957外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますを国内法制化した、2019年2月20日付オルドナンス2019-116外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますで規定された。労働法適用が義務付けられる「長期出向(détachement)」の定義は「12カ月を超える」ことで、13カ月目から労働法が適用されるが、理由を明記して申告すれば、6カ月の延期が可能になり、19カ月目から適用される。出向者のポストに別の出向者が交代で着任する場合、前任者の出向期間も含めて計算する。

長期出向者には、労働契約の締結や履行、変更、移転、解消などを除くフランスの労働法典が全て適用され、労働組合への選挙権が付与される。適用延期の申告を怠った場合、従業員1人当たり最高4,000ユーロの罰金、2年以内に再度違反の場合は最高8,000ユーロの罰金が労働法に基づき行政罰として企業に科される。

今回の規制対象には、同一企業グループ内の任務遂行のために日本からフランスへ派遣され、「サラリエ・デタッシェICT」〔外国人就業規制・在留許可、現地人の雇用(フランス)参照〕のビザ・滞在許可証申請をした出向者も含まれる。

フランスの労働法では、短期間の出向であっても、労働関係における個人および集団の自由、差別および男女間の職業上の平等、出産に係る保護、産休(母親・父親)、冠婚葬祭のための休暇、スト権の行使、労働時間、祭日、有給休暇、最低賃金および残業の増額を含む給与の支払い、法的または業界協約で規定された給与に付随するもの、労働安全衛生の規則、違法労働などの事項についてはフランスの労働法および業界の全企業が順守しなければならない「業界協約PDFファイル(0.0B)(conventions collectives étendues)」の適用を義務付けている。

2020年7月30日以降、上記のリストに、(1)フランスの同業種の企業と同等の処遇、(2)雇用主から直接または間接的に支払われる基本給、または最低賃金およびその他全ての現金または現物支給などの手当てを含む報酬、(3)職務遂行のための交通費、食事代、宿泊費の払い戻しが追加される。

これらを定めたオルドナンスは2020年7月30日から施行となるが、既に出向中の従業員については、施行日以前の出向期間も合わせて計算(出向時から起算)するため、注意する必要がある。政府は不正な派遣労働の取り締まりを強化しており、フランスに出向社員を送る際には事前申告を行い、フランスの受け入れ企業は監査に備えて出向のための必要書類を提出できるよう準備しておかなければならない。

(奥山直子)

(フランス)

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