ジェトロ、日系企業向けの労務管理セミナーをパリで開催

(フランス)

パリ発

2019年10月24日

ジェトロは9月24日、在フランス日系企業向けに、「労務管理の基本」をテーマとするセミナーを開催した。フィダル法律事務所の遠藤佳澄・労務関係担当マネジャーが(1)労働法関連法規、(2)休暇および欠勤、(3)給与、(4)労働時間に関し、特に日系企業が留意すべき点を中心に説明した。

日本とフランスの労働環境の相違により、今回は取り扱わなかった解雇の問題は別として、労働契約や有給休暇、労働時間が日系企業にとって理解し難い点だ。

労働契約には、無期限フルタイム雇用契約とその他の雇用契約(パートタイム雇用契約、有期雇用契約 CDD)があるが、いずれも正社員であり、労働条件や待遇で差別することはできない。有期雇用契約を恒常的に必要なポストについて締結することも禁じられており、病欠中の従業員の代替、一時的な通常業務の増加などに限られていることにも注意が必要だ。

有給休暇の権利は1日でも勤務すれば発生する。1年在籍した従業員に対し、雇用主は就業日ベースで年間30日の有給休暇の権利を付与しなければならない。

病欠中の雇用主による給与維持では、(1)勤続1年以上の従業員が、(2)欠勤日から48時間以内に医師の診断書を雇用主に提出し、(3)社会保険局からの病欠手当の支給対象に該当するという3条件を満たすと義務になる。病欠中に給与維持が認められる日数は勤続年数により60~180日の間で変動し、保証される給与額は病欠期間に応じて90%もしくは67%だ。

法定労働時間は週35時間。超過勤務は1日当たり10時間、週当たり48時間、12週間平均で週44時間の最長労働時間を順守することを条件に、雇用主が従業員に求めることが可能。一般職との労働契約では、労働時間を週35時間とするのが一般的だ。管理職との労働契約では、週または月単位の労働時間、もしくは年単位の労働時間および労働日数を定めて、定額給与を支払う包括契約が一般的で、中でも年単位の労働日数を定めることが多い。包括契約の場合は、超過勤務、1日または週単位の労働時間上限に関する規定は適用外となる(定額給与制)。法定労働日数上限は年218日。

なお、労働法関連法規の優位性は高い順に、(1)EU規則(加盟国の国内法に直接適用)、(2)EU指令(加盟国に国内法制化を義務付け)、フランスの(3)憲法、法律(労働法典)、(4)政令、(5)団体協約、(6)労働契約、(7)慣習、企業などにおける(8)雇用者の決定に基づく規定、(9)内規となる。

(後藤尚美)

(フランス)

ビジネス短信 d4e45eda30227477