2020年1月から法定最低賃金を月額1万2,130ルーブルに引き上げへ

(ロシア)

欧州ロシアCIS課

2019年10月01日

ロシア連邦政府は9月21日、法定最低賃金を2020年1月1日から、月額1万2,130ルーブル(約2万621円、1ルーブル=約1.7円)に引き上げる法案を承認したと発表した。法案を策定した労働・社会保障省は、近日中に連邦下院に法案を提出するとしている。今後、下院、上院の審議を通過し、大統領が署名すれば発効する。

法定最低賃金は、前年第2四半期の労働者の最低生活費を基準として算出される。2019年の法定最低賃金額は月額1万1,280ルーブルのため、850ルーブル(7.5%)の引き上げとなる。2018年5月に、それまで、法定最低賃金が労働者の生活最低限度額を下回っていた状況を是正するため、同額まで引き上げた(2018年3月23日記事参照)。

マクシム・トピリン労働・社会保障相によると、法定最低賃金の引き上げの対象となる労働者は約320万人で、うち半数が国・地方自治体などに属する公的機関職員という。このため、今回の引き上げに伴い、連邦予算から58億ルーブルが、地方自治体予算から151億ルーブルが拠出されることになるとしている(「タス通信」9月13日)。加えて、プーチン大統領は9月19日に、公務員の月額給与を2019年10月から4.3%引き上げる大統領令に署名した(2019年9月19日付大統領令第463号)。

ロシアでは、法定最低賃金の引き上げに関する議論が引き続き活発に行われている。9月26日に、野党「公正なロシア」の議員団は、法定最低賃金を生活最低限度額の1.15倍とする法案を連邦下院に提出した。同党のオレグ・ニコラエフ下院議員は、法定最低賃金でも個人所得税の税引き後には、生活最低限度額を下回る状況が生じていることに鑑み、「生活最低限度額を下回る給与受領者は自動的に貧困層に分類される」と述べた上で、貧困率削減に関する大統領指示に基づき、生活最低限度額をベースとする法定最低賃金額の係数を引き上げるべきだと主張している(「下院TV」9月26日)。

なお、法定最低賃金は給与だけでなく、各種税額・支払金額、罰金額などの算定にも用いられる。

(齋藤寛)

(ロシア)

ビジネス短信 c976b195b1c87ea3