大統領選挙、中間選挙敗北の教訓から学んだペロン党急進派の勝利

(アルゼンチン)

ブエノスアイレス発

2019年10月28日

アルゼンチン大統領選挙は「すべての戦線」(ペロン党急進派)のアルベルト・フェルナンデス元首相がマウリシオ・マクリ大統領を破った。勝利の要因には、マクリ大統領の経済失政がある一方で、ペロン党急進派が2017年の中間選挙での敗北から教訓を得た一面もある。

中間選挙でマクリ大統領率いる連立与党「カンビエモス」が全国規模で大勝したが、その時の「主人公」はペロン党急進派のクリスティーナ・フェルナンデス・デ・キルチネル前大統領(以下、CFK)だった(2017年11月13日記事参照)。ブエノスアイレス州の上院議員選挙に立候補して当選したが、所属政党を含めた左派勢力は伸び悩んだ。

当時、CFKが政治の表舞台に出ることは、幾つかの教訓をペロン党急進派に与えた。1つ目は、経済改革を進めてきたアルゼンチンにとって同氏が前面に立つと、国内外に不安材料を与えることだ。2つ目は、CFKの立候補によって左派勢力のペロン党が穏健派と急進派とに分断されたこと。3つ目は、中間選挙がCFK政権時の「過去」とマクリ政権による「未来」という構図を際立たせる結果につながったことだ。マクリ政権与党はCFKの存在を巧みに利用して勝利に結びつけた。

それから2年が経過した。経済情勢の変化も相まって、ペロン党急進派は先の教訓から対策を講じて勝利に近づけていった。まず、CFKを表舞台に立たせなかったことだ。大統領の有力候補とされながらも、自ら所属する政党の大統領候補には自分の部下で、思想的にはペロン党穏健派に当たるフェルナンデス元首相を選んだ。その決断が功を奏して、穏健派と急進派の分断も克服した。ペロン党の大同団結である。また、「過去」と「未来」を際立たせることに対しても、野党は経済情勢の悪化を招いたマクリ政権を2001年のデフォルトの再来という「過去」になぞらえることに成功した。今回は、ペロン党が「未来」を語る主体となるような構図を用いて、浮動票の獲得にもつながった。

(紀井寿雄)

(アルゼンチン)

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