ドイツで相次ぐ食品スキャンダル、対応に注目が高まる

(ドイツ)

ベルリン発

2019年10月17日

食品スキャンダルが相次いで発生し、ドイツ社会に衝撃を与えている。ドイツ大手乳製品メーカーのDMKドイチェス・ミルヒコントール(以下、DMK)は10月11日、牛乳の定期検査でバクテリアが検出されたことから、ドイツ国内の大手スーパーマーケットチェーンで販売されている一部の牛乳を、リコールの対象とすることを発表した。ドイツでは、リステリア菌が混入したソーセージが原因で高齢者2人が死亡していたことが判明し、当該ソーセージメーカーが10月2日に生産停止命令を受けた事例があったばかりだ。なお、このメーカーは、10月4日に破産申請をしている。

ドイツ連邦消費者保護・食品安全庁(BVL)によると、2012年以降、ドイツにおけるリコールは倍増しており、特に食肉・乳製品が多いという。こうした状況下、事件発覚後に消費者に対していかに迅速かつ正確な情報提供ができるか、という点がますます重要になっている。

ドイツ食品飲料産業連盟(BVE)は10月8日に、世界最大級の総合食品見本市アヌーガ会場内で、企業のリスク管理をテーマにワークショップを開催し、食品安全の専門家が活発な議論を行った。連邦食品監督官連盟(BVLK)のアニャ・ティテス会長は「食品スキャンダルを起こした企業は、当局や報道機関、最終消費者からの要請に対して協力的である必要があり、透明性を担保しなければならない」とコメント。また、ドイツ食品連盟のマノン・シュトルック・パツィナ氏は「企業は報道機関への情報提供はもちろんのこと、自らSNSを通じて発信していくことも大切」と述べ、デジタル化社会において最終消費者と直接コミュニケーションを取ることの重要性を指摘した。

上述の牛乳のスキャンダル発生後、DMKは主要メディアや自社ウェブサイトおよびツイッターを通じて、速やかにリコールを発表した。対象製品名や販売店名などの情報も明記しており、NGOの食品安全専門家からは、同社の迅速な対応を評価する声もある。これは、消費者意識の高まりとも併せ、不祥事発生後の対応の重要性を示唆するものだ。企業にとって、万が一の事態に備えて、社内で対応マニュアルを整備し、時代の進展に合わせて常に改善していくことが必要とされている。

写真 スーパーマーケットの乳製品コーナーに掲示されたリコールの告知文(ジェトロ撮影)

スーパーマーケットの乳製品コーナーに掲示されたリコールの告知文(ジェトロ撮影)

(望月智治、ニコル・レンガー)

(ドイツ)

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