米ニューヨーク市の小売店舗空室率、過去10年で1.5倍に

(米国)

ニューヨーク発

2019年10月25日

ニューヨーク市のスコット・ストリンガー会計監査官が9月25日に公表した報告書(Retail Vacancy in New York City外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)によると、2017年における同市の小売店舗の空室率は、2016年(5.4%)から0.4ポイント上昇して5.8%となった。世界金融危機前の2007年(4.0%)の1.5倍で、この10年間で最も高い水準だ。また、2017年の空き店舗面積は1,180万平方フィート(約1.1平方キロ)と、2007年(560万平方フィート)の約2.1倍となった。

地区別の空室率をみると、スタテン島が10.8%(前年比2.2ポイント増)と最も高く、次いで、クイーンズ区(6.4%、1.1ポイント増)、ブロンクス区(6.3%、0.7ポイント減)、マンハッタン区(5.2%、0.4ポイント増)、ブルックリン区(5.1%、0.3ポイント増)だった。

オンラインショッピングの拡大などで上昇

報告書では、空室率の上昇にはオンラインショッピングの拡大、賃料の高騰、行政による過剰な規制手続きなどが影響していると指摘している。

ここ数年、インターネットで購入しやすい商品を取り扱う小売店の数は減り、2012年から2018年にかけて、一般商店は12%減、衣服店は7%減となった。また、オンライン化の進展により、客足が減少傾向にあるとされるショッピングモールの空きスペースの拡大も影響し、スタテン島やクイーンズ区の高い空室率につながったとされる。

小売店舗の賃料は市内のほとんどの地区で上昇しており、2017年の1平方フィート当たり平均賃料は51ドルと、2007年(42ドル)から約21%増となった。小売店舗が賃料の一部として支払う固定資産税額も上昇しており、2017年は約23億ドルと、2007年(約11億ドル)の約2倍となった。

行政による許認可手続きの長期化も、空き店舗増加につながっているとされている。例えば、酒類販売の免許、建物の変更許可、景観保護(Landmarks)の許可などを得るまでに要する期間は、空室率の高いマンハッタン以外の地区では長期化する傾向にあるとしている。

ストリンガー氏は、空室率の上昇により「(ニューヨーク市内の)建物が空っぽになり、近隣地域が荒廃するだけでなく、手ごろな賃料での店舗賃借の危機にもつながりかねない」と指摘外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますし、「あらゆる手段を用いて店舗賃料問題に取り組み、小規模事業者を支援しなければいけない」と述べた。その上で、例えば、高空室率地域に立地する小売事業者への税の優遇措置、許認可手続きを迅速化するための行政窓口の一元化、小売需要を勘案した都市開発やゾーニング計画の立案などが必要だと提言している。

(樫葉さくら)

(米国)

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