トランプ米政権、対トルコ制裁を解除、鉄鋼輸入追加関税も25%で据え置きか

(米国、トルコ、シリア)

ニューヨーク発

2019年10月24日

トランプ米国大統領は10月23日、トルコ政府がシリア北部での軍事行動を恒久的に停止すると通知してきたことを受け、10月14日に発動した対トルコ制裁(2019年10月16日記事参照)を解除すると発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。米国財務省はそれを受けて同日、制裁対象としていたトルコの2つの省と3人の閣僚を特別指定国民(SDN)から除外外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。また、トランプ大統領は、1962年通商拡大法232条に基づいて課しているトルコからの鉄鋼輸入への追加関税率を25%から50%に引き上げるとしていたが、実行に移す前に据え置きにしたもようだ。

トランプ大統領はホワイトハウスでの会見で、「この5日間、われわれが合意したシリア国境沿いにおける停戦は大方の予想を超えて維持されている」と現状を評価。トルコ政府から停戦を恒久化するとの通知を受けて、ムニューシン財務長官にトルコ制裁を解除するよう指示したと説明した。財務省は同日、トルコのエネルギー・天然資源省と国防省、ドンメズ・エネルギー天然資源相とアカル国防相、ソイル内務相を制裁対象となる特別指定国民から排除した。

米国商務省の報道担当者によると、トルコからの鉄鋼輸入に対する追加関税率は10月23日時点で25%のままとなっている。官報でも10月14日以降、追加関税率を引き上げる発表は出ていない。

ただし、トランプ大統領は会見で、トルコが宗教的マイノリティーや少数民族の保護を含む責務を果たさないのであれば、トルコから輸入される鉄鋼やその他全ての製品への大幅な追加関税をはじめ、強力な制裁を再発動する権利を留保するとも述べた。

トルコ軍によるシリア侵攻を招いたとされるトランプ政権による米軍のシリア撤退の判断に関しては、米下院が10月16日、それに反対する決議を賛成354票、反対60票の超党派で可決。上院でも10月21日にミッチ・マコーネル上院院内総務(共和党、ケンタッキー州)が同様の決議案を提出したが、ランド・ポール上院議員(共和党、ケンタッキー州)が十分な議論が行われていないことを理由に審議を止めていた。

トランプ大統領は会見で今後のシリア北部への関与について、油田地帯を守るために少数の部隊はとどめるとしているが、米国としては十分な貢献をしたとして、この地域からも撤退していくと述べた。

(磯部真一)

(米国、トルコ、シリア)

ビジネス短信 916c5c0b6e0cf5ed