米ニューヨーク州都市交通局(MTA)、交通システム刷新に515億ドル計上、提携企業を募る

(米国)

ニューヨーク発

2019年10月02日

ニューヨーク州都市交通局(MTA)は9月20日、米国コーネル大学のジェイコブス・テクニオン・コーネル研究所、ニューヨーク州開発庁(Empire State Development)と共催で、州内の交通インフラに関する会議「New Day at the MTA」をジェイコブ・ジャビッツ・センターで開催した。世界各国の技術系企業を招いた今回の会議では、MTAがこれまでに直面してきた交通システムの問題点を検証するとともに、インフラ刷新に向けて過去最大規模の515億ドルに及ぶ予算案(2020~2024年度)を発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますし、参加企業に対し最新技術の提供を求めた。

会議冒頭の基調演説外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますでアンドリュー・クオモ・ニューヨーク州知事(民主党)は、ニューヨーク州におけるインフラの歴史を顧み、20世紀初頭にジョージ・ワシントン橋、ウィリアムズバーグ橋、ホランドトンネルが建設された当時には、新しい技術が生み出されていたが、今回、参加企業者に対して新技術開発は求めておらず、時代遅れとなっているMTAの交通システムに対し、現在、既にある技術を提供してくれるだけで十分だと語った。

さらにクオモ知事は、これまでは特定企業による事業の独占が続いたことにより技術の進歩が停滞した経緯を説明し、州内の鉄道インフラを刷新する必要性を強調した上で、これからはMTAの新経営陣が新企業や新技術を受け入れる体制を構築すると述べた。

インフラ刷新計画の中で、最も重要としている地下鉄の新信号システム導入について、クオモ知事は、12マイル(約19.2キロメートル)ほどのレキシントン・アベニュー線の信号システムだけでも30億ドルもの予算を振り分けることを強調し、参加企業に対して事業への協力を促した。長年にわたり信号不具合による地下鉄の遅延が頻発し、利用者を悩ませているが、信号機の一部に1930年代に設置されたものが使われていることも原因の1つとされている。

7時間に及ぶ会議では、昼食会を挟んでコーネル大学をはじめ、コロンビア大学やカリフォルニア大学バークレー校などの学者と専門家によるパネルディスカッションが行われた。各パネルディスカッションの議題は、「設計技術開発」「信号と列車制御」「サイバーセキュリティー」「データ分析」「利便性」「キセル防止技術」で、それぞれ活発な議論が展開された。

(吉田奈津絵)

(米国)

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