米国の石油製品輸出の伸び鈍化、製油所の稼働率低下と世界経済減速が主因

(米国)

米州課

2019年10月30日

米国の2019年上半期の石油製品の輸出は、日量547万バレル(以下、b/d)と、前年同期比で0.3%の微増にとどまった。米国エネルギー情報局(EIA)が10月24日に明らかにした外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます。EIAによると、輸出の伸び悩みは、米国内の製油所の稼働率が低下したことと世界的な景気減速によるという。

原油を精製して得られる石油製品は、(1)灯油や軽油などを作る中間留分、(2)液化天然ガス(LPG)、ガソリン、ナフサなどを作る軽質留分、(3)潤滑油やタールなどを作る重質留分に分類される。米国の石油製品輸出の大宗を占めるのは中間留分で、2019年上半期の輸出は130万b/dと前年同期比で5%の増加となった。

中間留分の主要な輸出先は中南米諸国で、メキシコ(輸出シェア22%)、ブラジル(13%)、チリ(7%)、ペルー(5%)などとなっている。中間留分の欧州向け輸出ではオランダ(4%)の比率が高いが、オランダは積み替え国であり最終需要先ではない。

プロパンの輸出は、2019年上半期に前年比16%増加し、103万b/dに達した。プロパンはおもに暖房用として使用されるほか、輸送燃料や石油化学原料として用いられる。プロパンの最大の輸出先は日本(輸出シェア32%)で、メキシコ(12%)、韓国(8%)、ブラジル(5%)、オランダ(5%)と続いている。

米国では、製油所の多くが集積しているメキシコ湾岸から距離的に近いメキシコ向けの石油製品の輸出が多い。メキシコはエネルギー市場改革によって、国営石油会社Pemex以外の事業体でも2018年から一部の石油製品を輸入できるようになったが、これが米国からメキシコへの輸出増に寄与している。メキシコはもともと産油国だが、メキシコ国内の製油所での石油製品の生産量は2015年以降減少傾向にある。

一方、残査燃料油(蒸留残油を含む燃料油のことで重油の主成分)の輸出は、2019年上半期に前年同期比で7万4,000b/d減少して25万8,000b/dとなった。2018年上半期、米国の残留燃料の輸出先はシンガポールが首位だったが、シンガポールのバンカリング市場では硫黄含有量を制限する新しい国際規制への対応が進んでおり、2019年上半期は前年同期比で6万8,000b/d減少した。

(木村誠)

(米国)

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