ワサビの普及に取り組む「金印わさびヨーロッパ」に聞く
(ドイツ)
ベルリン発
2019年10月01日
日本からドイツへの2018年の農林水産物・食品輸出額は72億2,000万円となり、5年間で約25%増と、着実に増加している。他方で、現地の大手スーパーマーケットで販売されている日本産食材はまだ少ないのが実情だ。それだけに、現地大手スーパーマーケットで扱われている「金印WASABI」の存在感は際立っている。同社のドイツ市場開拓について、ベルリンで開催された「Japan Food Festival Berlin」(2018年9月18日地域・分析レポート参照)の会場で、金印わさびヨーロッパ代表の小西康介氏に話を聞いた(9月7日)。
地道な営業活動が重要
金印(本社:名古屋市)は、1929年創業の加工わさびメーカー。産地(自社農園を含む)から海外まで一気通貫型の輸出モデルが評価されて「平成30年度農林水産大臣賞」を受賞するなど、日本を代表する食品輸出事業者だ。輸出品目は、粉わさび、チューブわさびなど約20品目にわたり、輸出先は米国、英国、ドイツなど世界60カ国以上。海外進出にも積極的で、ドイツ・フランクフルトには10年前に駐在所を設置した。
当時、駐在所長に就任した小西氏は、本来のワサビの風味や正しい使い方を理解してもらうべく、ドイツ・ケルンで開催される世界最大級の食品見本市ANUGA(アヌーガ)に毎回出展するなど、地場の卸売業者に試食提供を通じたアピールを継続した。
こうした地道な取り組みにより、ドイツの大手流通・小売業者に販路を有する現地卸売業者との取引に成功した。「長期的な関係構築には、相手が困ったときにいつでも相談に乗れる体制が重要だ」と小西氏は語る。現地に拠点があるからこそ、これが可能となり、信頼関係を築くことができたようだ。
販路拡大を目指す同社は2019年4月にフランクフルト駐在所を現地法人化し、従業員を増員するなど体制を拡充した。日本食材を取り扱うアジア系、中華系の事業者(小売店、レストランなど)の増加も追い風だ。
小西氏が「ドイツでも特にベルリンではSUSHI(すし)を提供するレストランの数が圧倒的に多い」と語るとおり、ベトナム系や中華系レストランではサイドメニューとしてSUSHIを提供するところが多い。現在、約375万人を抱えるベルリンは、エネルギッシュで、過去10年間で人口が38万人以上増加するなど成長が継続するドイツ最大の市場だ。
今回、ビジネスパートナーである現地卸売業者と共に「Japan Food Festival Berlin」に参加した金印わさびヨーロッパは、ワサビの風味、食べ方などを、一方、パートナーがしょうゆやみそなどの製品をPR。相乗効果を狙う二人三脚での営業活動を行なっていた。同社の真骨頂とも言える「現地に根付いた地道な営業活動」はドイツ市場開拓のカギとなるだろう。
(望月智治)
(ドイツ)
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