カナダ・トルドー首相、連立は組まず自由党の少数与党政権樹立の方針明言

(カナダ)

トロント発

2019年10月25日

カナダのジャスティン・トルドー首相は10月23日の記者会見で、自由党の少数与党政権による、性別のバランスの取れた新内閣を11月20日に発足させると述べた。

自由党は10月21日の総選挙で第1党を維持したが、過半数には届かなかった(2019年10月23日記事参照)。トルドー首相は会見で、今後数週間で各党の党首と政策の優先事項や政党間協力について協議したいとする一方、「正式な、または非公式なかたちで連立政権を形成する計画は全くない」と述べた。また、自由党の支持者に謝意を述べるとともに、自由党に投票しなかった有権者に対しても、どの党を支持したかにかかわらず、政権は全てのカナダ国民のために政策を実行していくと語った。トランスマウンテン・パイプラインについては、拡張計画は継続すると述べ、「カナダ最大の利益になる」との認識を示した。

総選挙では、ケベック州の主権獲得を目指すブロック・ケベコワが同州で議席を22増やし躍進する結果となったが、トルドー首相は、気候変動などの問題で同党と協力することに前向きな姿勢を示した。また、サスカチュワン州とアルバータ州で自由党が議席を失ったことから、両州の有権者に対し、政府は西部の州の懸案事項に取り組み「みんなの声を聞く」と呼び掛けた。

スコット・モー・サスカチュワン州首相は22日、自身のツイッターで声明を発表し、自由党は得票率では保守党を下回っており、「明確な国民の信任を得ていない」と指摘した。また、「今回の選挙結果はサスカチュワン州の欲求不満と疎外感が私の人生のいつの時点よりも大きいものであることを示した」と述べ、連邦が導入した炭素税の廃止や、国際市場に石油を輸出できるようにするためのパイプラインの建設計画などについて、いつでもトルドー首相と議論する用意があると訴えた。

ジェイソン・ケニー・アルバータ州首相も同日、自身のツイッターで、トルドー首相と電話協議をしたことを明らかにし、「(今回の選挙で)アルバータ州民が表明した強い不満は非常に現実的であり、パイプラインの建設と連邦での公正な取引が必要だ」と述べた。

トルドー首相はダグ・フォード・オンタリオ州首相とも電話協議を行い、同州首相府によると、両氏はトロント地域の交通インフラ計画など同州の共通の目標について話し合い、重要なプロジェクトを前進させるために協力していくことで合意した(CBCニュース電子版10月22日)。

カナダ商工会議所のペリン・ビーティー会頭は22日に発表した声明外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますで、「選挙の開始時点にカナダが直面していた課題はまだ残っている」とし、選挙期間中の党派対立から脱し、「新たなコンセンサスを構築し、カナダの経済的課題に速やかに取り組むのは待ったなしだ」と国家の団結を求めた。

(酒井拓司)

(カナダ)

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