英下院が選挙法案を可決、12月12日にブレグジット問う総選挙へ

(英国、EU)

ロンドン発

2019年10月30日

英国下院は10月29日夜、政府が提出した下院議員選挙を求める法案を賛成438票、反対20票で可決した。同法案の規定では、12月12日に総選挙が行われる。法案は30日に上院で審議されるが、可決は確実視されている。下院は、11月6日にも解散される見込み。2015年5月、2017年6月に続き、任期5年の英国で2年おきに実施されるのは異例で、春から初夏が通例の総選挙が12月に実施されるのは、1923年以来約100年ぶり。異例づくしの総選挙で、各党は英国のEU離脱(ブレグジット)をめぐる混乱に決着をつけることを目指す。なお、これにより、EU離脱法案の採決は、選挙後に持ち越される。

ボリス・ジョンソン首相は前日の10月28日までに3度、解散・総選挙を求める動議を否決されてきた。しかし10月29日朝、それまで消極的だった最大野党・労働党が一転して総選挙支持に転じたことで、流れが固まった。首相が選挙実現の戦術を変えた(2019年10月29日記事参照)ため、同党が賛成しなくても選挙実施の法案が可決される可能性が出ていた中、抵抗勢力として世論から非難されることを避けたいジェレミー・コービン党首ら執行部は、支持に転じた。ただ、党内には方針転換に否定的な議員も残り、同党と自由民主党の両党首らが提出した選挙日を12月9日に早める修正動議は、総選挙を望まない労働党議員11人らが棄権に回るなどした結果、賛成295票、反対315票で否決されている。

ジョンソン首相は、採決後の与党・保守党議員の会合で、次の選挙はブレグジットなどの重要課題を実現するためのものだと檄(げき)を飛ばした。首相は法案採決に先立ち、9月に党を除名された元保守党議員21人のうち、グレッグ・クラーク前ビジネス・エネルギー・産業戦略相やチャーチル元首相の孫のニコラス・ソームズ議員ら10人の復党を決定。党内融和と求心力拡大に注力している。

調査会社ユーガブの世論調査では、保守党が労働党を13ポイント、リードしている(表参照)。しかし2017年4月にテレーザ・メイ首相(当時)が、議会の支持を得て解散・総選挙に踏み切った直後も、保守党の支持率は48%で、労働党の24%を大幅に上回っていたが、労働党の巻き返しを受けて、選挙で保守党は過半数割れに追い込まれている。対する野党は、争点のブレグジットをめぐっては、EU残留派や穏健離脱派の支持を合わせれば保守党を上回るが、票が分散して保守党に有利に働く可能性もある。保守党の勝利で2020年1月末の離脱が実現するのか、政権交代で2度目の国民投票に道が開かれるのか、あるいは少数与党の下で膠着(こうちゃく)状態が繰り返されるのか。年内にもその方向が定まる。

表 英国下院の主要政党の現有議席数、支持率、ブレグジットの主張

(宮崎拓)

(英国、EU)

ビジネス短信 538f455b2388099b