フェイスブックの暗号資産リブラ、逆境の中で運営団体が発足

(スイス)

ジュネーブ発

2019年10月24日

フェイスブックが発表していた暗号資産(仮想通貨)「リブラ」の運営団体のリブラ財団が10月15日、正式に発足PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)した。理事会メンバーは21社で、当初メンバー入りの予定が報じられていたEコマースのペイパル、イーベイや、クレジットカード会社のビザ、マスターが外れており、普及の観点からは厳しい門出となった。

リブラは、フェイスブックの膨大なユーザー数や、スマートフォン、ブロックチェーン技術の発展を背景に、広いユーザー層に安全で偏りのない決済サービスを提供することを目的に、2019年6月に構想が発表された。さまざまな利便性が強調されているが、フェイスブックが過去に英国データ分析会社ケンブリッジ・アナリティカによるユーザー情報漏出事故を起こしていること、通貨バスケット連動が予定されており、各国の中央銀行が持つ通貨自主権に抵触しかねないサービスが各国で行われることとなることに、各国が早い段階から懸念を表明している。

フランスのブリュノ・ルメール経済・財務相も、10月17日のG7財務相・中央銀行総裁会議の際や10月12、13日にOECDで開催されたブロックチェーン会合で、「現状のままでは、ヨーロッパの地へのリブラ導入を許可することはできない」と発言するなど、強い抵抗感を示した。

米国では7月、上院の委員会の聴聞会にリブラ開発責任者のデビッド・マーカス氏を呼んで開発方針の説明をさせており、8月には議員団がジュネーブを視察した。当初、2020年前半の導入を予定していたが、10月23日にフェイスブックの最高経営責任者(CEO)のマーク・ザッカーバーグ氏が議会証言を行い、規制当局の全面的な認可が得られなければリブラ発行はないと明言した。

リブラ財団はリブラは各国の規制に従うとしているが、多くの点で安全性の確保体系が明確になっていないことも逆境に置かれている一因と思われる。個人情報保護についてはスイス法令によるとされているが、7月にスイス個人情報保護委員会が出した公開質問状への対応も明らかとなっていない。

(和田恭)

(スイス)

ビジネス短信 4dad45d97717c4ac