上半期のフィンテック投資額、中国を上回る

(シンガポール)

シンガポール発

2019年10月03日

英国の調査会社フィンテック・グローバルのレポート(9月18日発表)によると、シンガポールにおけるフィンテック分野のスタートアップへの投資額が2019年上半期に総額16億2,260万米ドルと、2014年以降初めて中国での投資額を上回った。アジア地域のフィンテック分野の投資はこれまで、中国がリードしていた(表参照)。

表 アジアの主要国・地域のフィンテック投資

2019年上半期には、シンガポールに本社を置くシー(SEA)による大型投資案件がシンガポールのフィンテック投資総額を大きく押し上げた。一方で、中国のフィンテック投資が前年と比べて大きく縮小した。シーは電子商取引(EC)サイトのショッピー(Shopee)の運営のほか、ゲーム配信や電子ウォレット(AirPay)サービスを提供するシンガポールのユニコーンの1社。同社は2017年10月、米ニューヨーク証券取引所(NYSE)に新規株式公開(IPO)を行い、2019年3月に米国預託株式(ADS)を1株22.50米ドルで発行して15億米ドル以上を調達し、2019年上期のアジアにおけるフィンテック分野の最大の投資案件となった。

シンガポールのフィンテック投資、6割以上が決済・送金部門

フィンテック・グローバルの調査によると、シンガポールのフィンテック分野のスタートアップへの2014年から2019年上半期までの投資額の64.3%が決済・送金部門だ。次いで、融資(7.6%)、保険テック(5.7%)、富裕層向け資産管理(4.3%)と続いた。同社は決済・送金部門に投資が集まった理由について、「決済をめぐる変化と、特にアジア・オセアニア地域で進むキャッシュレス化に向けたトレンドに対応するため」と指摘している。

シンガポール通貨金融庁(MAS、中央銀行に相当)は2015年以降、アジアの金融センターとしての競争力強化のため、フィンテックを積極的に振興している(ビジネス短信2017年12月1日付参照)。政府の支援などが奏功して、短期間で東南アジアでは最も多くのフィンテック分野のスタートアップが集積する一大拠点へと浮上している。

(本田智津絵)

(シンガポール)

ビジネス短信 3edd0edc4d6f802a