食品医薬品局や土地登記局などに苦情殺到、政府が業務改善を指示

(フィリピン)

マニラ発

2019年10月18日

フィリピン大統領府直轄の「お役所仕事排除局(ARTA)」は、ビジネス環境改善法の施行細則(IRR)を2019年7月22日に施行(2019年7月25日記事参照)してからちょうど100日が経過した10月16日に記者会見を開き、この100日間で国民から寄せられた苦情が最も多かった政府機関として食品医薬品局(FDA)、土地登記局(LRA)、陸上交通許認可規制委員会(LTFRB)の3機関の名前を挙げた。

ARTAのジェレミア・ベルジカ局長は地元メディアに対して、IRRの施行から100日間モニタリングをした結果、職員の怠慢や煩雑な手続きで、いくら待っても申請が通らないといった、いわゆる「お役所仕事」に対する国民からの苦情が殺到しているとした上で、「特にFDA、LRA、LTFRBのお役所仕事はひどく、ただちに業務を改善するように指示を出した」と説明した。

食品や医薬品の商品登録を所管するFDAは9月、登録承認が滞っている案件リストを提出するようARTAから求められた結果、3,125件もの承認が滞っていることが判明した。

土地登記などを所管するLRAは、10年前からオンライン登記手続きシステムを構築するよう政府から命令を受けているが、いまだに構築できていない。ドゥテルテ大統領は2019年7月に実施した施政方針演説(SONA)において、最も国民の苦情が殺到している政府機関としてLRAを名指しで非難した。

バス会社、タクシー会社、ライドシェアのグラブといった輸送事業者の規制当局であるLTFRBも、申請に対するスムーズな承認を実現するためのオンラインシステムを構築するよう命令を受けているが、実現していない。

ARTAは3機関のほかにも、徴税を所管する内国歳入庁(BIR)、年金を運用する社会保障機構(SSS)、車両登録や運転免許の申請などを所管する陸運局(LTO)、住宅共済基金を運営する持ち家促進相互基金(Pag-IBIG Fund)の4機関を、国民からの苦情が多い政府機関として挙げた。

2019年7月に施行されたビジネス環境改善法のIRRは、フィリピン国内外の全ての中央政府、地方自治体、政府系企業を対象として、単純な行政手続きは申請時からワーキングデーで3日以内、複雑な行政手続きは7日以内、公安や公衆衛生、公共政策などに関わる行政手続きは20日以内に処理することが定められ、初回違反時は半年間の停職、2回目の違反時は1~6年の禁錮、50万~200万ペソ(約105万~420万円、1ペソ=約2.1円)の罰金、退職金受給権の喪失といった処罰が科される。

世界銀行が各国のビジネスのしやすさをランキングした報告書「ビジネス環境の現状」において、フィリピンは190カ国・地域中、2017年版では99位にランキングしたが、その後は2018年版で113位、2019年版で124位と、年を追うごとに順位を下げている。

(坂田和仁)

(フィリピン)

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