中銀がQRコードによる電子決済プラットフォームの運用を開始

(メキシコ)

メキシコ発

2019年10月08日

メキシコ中央銀行は9月30日、国内に銀行口座を持つ売り手と買い手の間のモバイル端末を活用した、代金の電子決済を即時に行うデジタルプラットフォームCoDi外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますの運用を正式に開始した。CoDiは中銀が主導し、3,000以上の預金口座を運用する国内の金融機関が参画して開発されたもので、売り手が買い手にQRコードを提示し、スマートフォンなどのモバイル端末を通じて、即時決裁を行うプラットフォームだ。売り手と買い手が異なる銀行に口座を持っている場合、中銀が運営する銀行間電子決済システム(SPEI)を活用して決済を行う。手数料は無料で、資金は即時に双方の口座間を移動する。CoDiを通じた決済の上限額は8,000ペソ(約4万4,000円、1ペソ=約5.5円)。

大手商業銀行を中心に、2019年4月27日から導入試験が行われていたが、既に対象となる30の金融機関のうち29行が中銀の承認を得ており、国内全預金口座の99.3%でCoDiが使える状態となっている。売り手および買い手は、CoDiに参加する銀行のモバイルバンキング・アプリを通じてQRコードの作成や代金の支払いが可能。口座を開設した銀行がCoDi対応アプリを提供していない場合は、中銀のアプリ(現状ではAndroid端末のみ)を活用することができる。なお、CoDiは短期的にはQRコードによる決済を想定しているが、NFC(近距離無線通信)による決済も想定しており、モバイル端末やアプリの機能次第ではNFC決済を行うことも可能だ。

金融包摂の促進などが主目的

中銀はCoDiを推進する目的として、(1)即時の簡易で効率的で安全かつ無料の決済手段を提供すること、(2)代金回収を即時に実現すること、(3)決済サービス間に競争を生み出すこと(他の決済サービスの手数料低下を狙う)、(4)金融包摂を促進すること、を挙げている。

電子税務の関係から、現状では正規労働者の給与はほぼ全て銀行口座に振り込まれることとなっており、正規労働者であれば銀行口座は保有している。しかし、メキシコでは納税者登録や社会保険登録のないインフォーマル就労者が就業人口の56.3%(2019年第2四半期)に及ぶことから、世界銀行のデータ(Findex 2017)によると、成人人口に占める銀行口座保有率は2017年に37%で、チリ(74%)、ブラジル(70%)はおろか、コロンビア(46%)、ホンジュラス(45%)、ペルー(43%)の後塵(こうじん)を拝している。CoDiを通じて、即時で安全で手数料もかからない決済手段を提供することにより、国内の銀行口座保有率を高める効果を狙っている。

(中畑貴雄)

(メキシコ)

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