2020年政府予算法案、財政再建より減税による家計購買力増強を優先

(フランス)

パリ発

2019年10月07日

フランスのブリュノ・ルメール経済・財務相は9月27日、2020年のフランス政府予算法案PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)を発表した。燃料価格の高騰と炭素税引き上げ計画に市民が抗議して2018年11月に始まった「黄色いベスト」運動や、1~3月に実施された国民協議の結果を受け(2019年5月9日記事参照)、財政赤字削減よりも、減税による家計購買力の増強を優先する予算編成となった。

減税規模は約100億ユーロに上る。このうち家計向け減税が93億ユーロで、マクロン大統領が4月に公約した50億ユーロの所得税減税のほか、住民税減税(37億ユーロ)、残業手当に関わる税・社会保険料減免措置(8億ユーロ)が柱となる。マクロン大統領は2022年までに270億ユーロの家計向け減税を公約しているが、うち206億ユーロの減税を2020年までに実施することになる。

企業向けには9億ユーロの減税措置を盛り込んだ。2018年予算法で法人税率を2022年までに25%まで段階的に引き下げることが定められており、2020年は売上高が2億5,000万ユーロ未満の企業に対する税率を28%で統一し、売上高が2億5,000万ユーロ以上の企業には課税対象利益50万ユーロまで28%、それを超える分には31%を課税する(注)。マクロン大統領は2022年までに130億ユーロの企業向け減税を公約しており、うち94億ユーロの減税が2020年までに達成されるとした。

他方、財政赤字はGDP比2.2%と、2019年の3.1%から大幅に低下する。ただし、2019年の数字は、法定最低賃金(SMIC)の2.5倍以下の賃金総額を法人税から控除する「競争力・雇用税額控除措置(CICE)」の社会保険料軽減措置の切り替えに伴い一時的に上昇したもの。その効果を除くと、2.3%にとどまることから、2020年の財政赤字の実質的な削減幅は0.1ポイントになる。公的債務残高のGDP比は98.7%(2019年98.8%)と高い水準で推移する。公務員の削減数は、2020年には47人と、2018年の1,079人、2019年の4,164人から大きく後退する。マクロン大統領は4月に国民協議の結果を受け、自身が選挙公約していた5年間で12万人の公務員削減目標を見直す考えを示していた。

予算編成の前提となる2020年の実質GDP成長率は、2019年から0.1ポイント低い1.3%に設定した。世界経済の先行き不透明感が続く中での減速にもかかわらず、フランス経済は内需、とくに政府の購買力支援措置を受けた個人消費の拡大に支えられ、比較的堅調に推移すると予想した。

(注)2019年は、売上高が2億5,000万ユーロ未満の企業課税対象利益50万ユーロまで28%、それを超える分には31%を課税。売上高が2億5,000万ユーロ以上の企業に対しては50万ユーロを超える利益分に33.33%を課税。

(山崎あき)

(フランス)

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