ペンス米副大統領、対中政策演説で貿易交渉の早期合意への期待表明

(米国、中国)

ニューヨーク発

2019年10月28日

マイク・ペンス米国副大統領は10月24日、米シンクタンクのウィルソンセンターが主催したイベントで、中国に対するトランプ政権の政策方針について演説した外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます。演説は6月に行われる予定だったが、同月末の米中首脳会談への影響を踏まえて延期されていた。演説は中国の行動を厳しく糾弾した上で、米国との協力を呼び掛ける内容となった。

米中の現実的な関係構築を呼び掛け

今回のペンス副大統領の演説の中核的なメッセージは、同氏が自身のツイッターでも強調した「米中関係には多くの課題があるが、これらの課題によって、現実的な協力関係が排除されることはない」という点にあったといえる。米中関係に詳しい米国人有識者も、ペンス副大統領が2018年10月にハドソン研究所で行った演説外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますに比べて、中国との協力を呼び掛ける発言が目立ち、硬軟でバランスの取れた内容と評価する。

ペンス副大統領は演説の冒頭、中国の資金力を用いた外交、軍事力の拡張、人権の弾圧、監視国家の構築、不公正な貿易慣行など、2018年の演説でも指摘した事項が引き続き行われていることを、事例を挙げて批判し、米政権は中国を戦略的かつ経済的なライバルと捉えている点を強調した。その認識は超党派の支持を得ているとし、その支持の下、政権は中国の行動を是正する政策を取っていると説明した。その上で、「米国は中国との対立を望んでいるのではない。米国は(中国との間で)平等な競争条件、自由な市場、公正な貿易、そして米国の価値観の尊重を望んでいる」と、中国に対して協調を求めた。

米中貿易交渉に関しては、第1段階の合意が11月にチリで開催されるAPEC首脳会議の際に署名されることを期待しているとした。ただし、その先には、知的財産権の保護や国有企業への補助金の廃止といった構造的な課題に中国が取り組むことが必要だと指摘した。

香港のデモ対応では米企業も批判

香港で続いている反政府デモへの対応については、中国政府に対して事態を平和的に収束させるよう牽制するとともに、中国政府に配慮して行動する米企業を批判した。ペンス副大統領はプロバスケットボールリーグNBAとナイキの名前を挙げて、「独裁体制下の完全な子会社のように行動している」と指摘し、米企業は世界のどこで事業を展開していても米国の価値観を守るべきとした。

米メディアもこの部分に焦点を当ててペンス副大統領の演説を取り上げている。ブルームバーグ(10月25日)は、演説に対する反応として、アダム・シルバーNBAコミッショナーの「特定の国・地域でビジネスを展開すべきでないと米政府が発信する段階になった場合には、われわれは(対象国・地域で)ビジネスを行わない」とペンス副大統領に同調する発言と、元NBA選手のチャールズ・バークレー氏の「どのような米企業も中国とビジネスを行っている」とペンス副大統領を批判する発言の両方を紹介している。

(磯部真一)

(米国、中国)

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