保健一般法を改正、肥満対策のため食品表示規格を変更

(メキシコ)

メキシコ発

2019年10月29日

メキシコで肥満対策の強化を目的とした保健一般法の改正が10月22日に国会を通過した。高カロリー食品など健康を害する恐れのある食品に対して警告表示を義務付けるものだ。行政府が官報で公布した翌日に発効するが、表示規格の詳細については、官報公示後180日以内に行われる食品・アルコール飲料の表示ラベル規格(NOM-051-SCFI-2010)の改定を待つ必要がある。

メキシコでは2014年以降、加工食品やノンアルコール飲料の包装の表面に、裏面の栄養成分表示とは独立したかたちでエネルギー、糖分、脂肪(飽和脂肪酸とその他)、ナトリウムの含有量に関する情報を表示することが義務付けられている。しかし、一般消費者にはその含有量がどの程度健康に悪いのか分からないという問題があり、肥満対策など健康予防の観点からは効果がないという指摘が多かった。今回、保健法第212条と215条が改正され、食品表示は理解が容易で、真正で、直接的で、簡易で、見やすいものでなければならないと規定された。さらに、食品・飲料包装の表面(裏面は不可)に、カロリーなどが保健省の定める基準値を超えた場合の警告表示をすることを義務付けた(表参照)。

保健一般法改正の国会審議の進展を受け、経済省と保健省は法改正が成立する前の10月21日付官報でNOM-051-SCFI-2010の改定案外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますを公示した。改定案は法改正にほぼ即した内容になっており、エネルギーや糖分、飽和脂肪酸、トランス脂肪酸、ナトリウムが表の基準を超えた場合、包装の表面にNOMが定める分かりやすい警告表示(「カロリー過剰食品」「過剰糖分含有食品」など)をしなければならない。表示デザインなどの細かい内容もNOMが規定する。NOM改定案は現在60日間のパブリックコメント公募中であり、終了後、正式に官報公示される。公示後、定められた移行期間を経て発効した際には、警告表示は生鮮品などの例外を除き、輸入品も含めて義務化される。

表 食品・飲料に警告表示を付ける基準値(案)

高い肥満比率

世界保健機関(WHO)の2016年時点のデータによると、メキシコの18歳以上に占めるBMI(ボディーマスインデックス)が30以上の肥満比率は28.4%で世界34位、カリブ島しょ国を除く米州主要国では、米国(37.3%、11位)、チリ(28.8%、29位)に次いで肥満が多い。肥満対策の強化と国民の健康に対する関心の高まりは、健康に良いというイメージの日本食の普及には追い風だ。2018年のメキシコの日本産緑茶の輸入量は前年比4.1倍の48.6トンに達している。

(中畑貴雄)

(メキシコ)

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