ロシアでも「働き方改革」、週休3日制導入に向けた議論が活発化

(ロシア)

海外調査企画課

2019年10月01日

日本では、「働き方改革」が進展しているが、ロシアでも同様の議論が巻き起こっている。きっかけは、第108回国際労働カンファレンスでのメドベージェフ首相によるスピーチだ(ILO主催、2019年6月11日)。首相は、技術の発展は雇用削減だけでなく、労働時間の削減と自由時間の拡大につながると指摘。週休3日制を導入し1時間当たりの生産性を20%上昇させたニュージーランドの企業を例に挙げ、労働時間の短縮が生産性の向上をもたらすと述べた。

労働・社会保障省は、生産性向上を目的とする国家プロジェクトに参加している企業を対象に、週休3日制導入を検討している。経済発展省のピョートル・ザセリスキー次官は「会社での勤務時間のうち、30~40%の時間、労働者は何もしていない。週休3日制は労働日数を減らし、労働者が空き時間を有効活用することを可能にする」と、導入の必要性を語っている(「イズベスチヤ」紙9月16日)。

ロシアのほかの省庁は、それぞれ週休3日制導入に関し、異なった見方をしている。ベロニカ・スクボルツォワ保健・社会開発相は、週休3日制は労働者の職業、年齢、性別によって、影響の度合いが異なるとし、「人々が健康な生活を送り、ともに時間を過ごすべき親しい人々、家族がいるのであれば、否定されるべきでない」(「ノーボスチ通信」9月5日)とした。一方、マクシム・オレシキン経済発展相は「導入には国民の賃金上昇と労働生産性の向上が不可欠」(「タス通信」9月4日)と指摘。デニス・マントゥロフ産業商務相も「賛成だが、導入に伴い工業や輸出における目標数値を達成することが難しくなるかもしれない」(「タス通信」9月5日)と語り、週休3日制の導入に伴う一定の条件付けの必要性や懸念を表した。

労使間においても、週休3日制の導入に対し意見が分かれる。求人サイト最大手「ヘッドハンター」の調査によると、経営者のうち76%が、賃金のおよび労働生産性の低下を理由に否定的と回答した(「コメルサント」紙9月12日)。一方、大手求人サイト「スーパージョブ」が労働者に対して実施した世論調査では、49%が賛成し、31%は「不要」と回答。また、追加で発生する休日について「家族とともに過ごす」(回答者の3分の1)、「新しい仕事を探す」(20%)と回答した(「インターファクス」8月22日)。

大企業が加盟するロシア産業家・起業家連盟のアレクサンドル・ショーヒン会長は「国民の可処分所得は既に6年間上昇していない。国民は休むよりも働く方が重要となっている。新たにできた休日はアルバイトに従事する可能性があり、負担が増えるだけだ」と述べ、週休3日制が導入されても労働者の生活は楽にならないとの見方を示した(「ノーボスチ通信」9月5日)。ロシア独立労働組合連盟は「本制度には賛成だが、賃金削減があってはならない」とし、企業が賃金カットの道具として導入することを警戒している(ロシア独立労働組合連盟発表8月8日)。

(宮下恵輔)

(ロシア)

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