国際商業会議所、インコタームズ2020を発表
(フランス、世界)
貿易投資相談課
2019年10月29日
国際商業会議所(International Chamber of Commerce:ICC)は9月10日、売り主と買い主間での物品の危険の移転時点や費用の負担区分などを規定したインコタームズの 2020年版の内容を公表した。発効は2020年1月1日の予定で、2011年1月1日に発効したインコタームズ2010年版から10年ぶりの改訂となる。
貿易取引では、(1)売り主と買い主との間で運賃や保険料などの費用の負担区分をどうするか、(2)売り主と買い主で物品の危険の負担をどの時点で移転するかという点について取り決める必要が出てくる。これらについて取り決めたものを貿易条件(Trade Terms)という。貿易条件は貿易取引上不可欠なもので、商慣習として誕生し発展してきた。
パリに本部を置くICCは1936年、貿易取引での共通の了解事項や合意事項を国際ルールとして確立するため、初めて定型的な貿易条件を取り決めた。これをInternationalのInとCommerceのCoにtermsをとって、Incoterms(インコタームズ)と呼ぶ。インコタームズはその後、1953年、1967年、1976年、1980年、これ以降は10年置きに修正、追加、改訂が行われ、それを国際的商慣行としてきた。
インコタームズ2020の前書き(Introduction)IX(インコタームズ2010と2020との違い)の62.で、インコタームズ2010との違いについて以下の7点を挙げた。
- 船積み証明(on-board notation)付きの船荷証券(Bill of Lading)とインコタームズ規則におけるFCA
- 列挙される「費用」
- CIFおよびCIPにおける保険の補填(ほてん)範囲の違い
- FCA、DAP、DPUおよびDDPにおける売り主および買い主が所有する輸送手段の手配
- 頭文字3文字のDATからDPUへの変更
- 輸送の義務と費用において安全に関連した要求を追加
- 利用者のためのエクスプラネートリーノート
特に今回の改訂では、ターミナル持ち込み渡し(Delivered At Terminal:DAT)の名称が削除され、仕向け地荷降し渡し(Delivered at Place Unloaded:DPU)が導入されたことが大きな変更といえる。インコタームズ2010におけるDATとDAPの唯一の違いは、DATでは「ターミナル」で到着した輸送手段から荷降ろしされたときに売り主が物品の引き渡しを行い、DAPでは、指定地で荷降ろしの準備ができている輸送手段の上で買い主の処分に委ねられたとき売り主が物品の引き渡しを行うということだった。インコタームズ2020では、まず、荷降ろしの前に引き渡されるDAPを、DATの前に表示するよう順序を逆にした。次に、DATの名称をDPUに変更したのは、仕向け地がターミナルに限定されないあらゆる場所であり得る現実を強調したためだ。
インコタームズ2020の前書き63.~77.で、上記1.~7.についてそれぞれ解説されている。なお、インコタームズ2020の公式な英和対訳版は、ICC日本委員会から近日中に発行される予定。発行後は同対訳版参照を。
(石川雅啓)
(フランス、世界)
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