政府、2020年国家予算案を議会に提出

(アルゼンチン)

ブエノスアイレス発

2019年09月27日

アルゼンチンのエルナン・ラクンサ経済相は9月16日、下院予算委員会に2020年国家予算案を提出し、詳細な説明を行った。補助金の削減などを含む財政緊縮を継続する当該予算案についての議論は、10月27日に控える大統領選挙の後、または12月10日の大統領就任後に行われる予定。新大統領が確定してから議論を開始する背景には、過去にいったん可決された法案を修正しなければならなかった経緯があるためだ。2015年には予算案が大統領選挙前に可決されたため、新政権の誕生とともに予算案は政令を通じて訂正する必要が生じた。今回は同様の事態を回避する目的があると思われる。

予算案には、主なマクロ経済指標の見通し(表参照)も含んでおり、2019年のGDP成長率はマイナス2.6%を見込むのに対し、2020年には1.0%のプラス成長に転じる見通しだ。その牽引役となるのが7.0%の拡大を見込む輸出だ。2018年に歴史的干ばつの影響を受けた農産品輸出は2019年にV字回復しており、2020年は、自由貿易協定(FTA)の締結で政治合意したEUや欧州自由貿易連合(EFTA)など、新たな輸出先の開拓が見込まれるため、大幅増を予測する。また、通貨ペソ安による追い風、主要輸出相手国であるブラジルの経済成長への期待、さらにバカムエルタ鉱区のシェールオイル・ガス田の開発によるエネルギー輸出などの増加も、経済を活性化させると分析されている。

表 主要経済指標見通し

予算案によると、2019年の消費者物価上昇率(インフレ率)は年率52.8%を記録すると見込む一方、2020年は34.2%まで低下する見通し。2020年の為替は年平均で1ドル67.11ペソを見込んでいる。投資は2019年も依然としてマイナス成長となるが、2019年のマイナス23.4%と比較すると大幅な改善を予測する。

財政目標では、IMFからの54億ドルの融資が待たれる中、基礎的財政収支(プライマリーバランス)はGDP比1.0%の黒字を達成する。歳出に関連しては、エネルギー分野や交通機関に対する補助金をGDP比0.48%削減し、地方州への交付金も0.1%削減される予定だ。

ラクンサ経済相は「現政権の限られた経済政策だけでなく、前政権が残した負の遺産や歴史的干ばつなどの悪天候に見舞われたこと、国際情勢など外部的要素なども影響した」と、現在アルゼンチンが置かれている状況を説明した。加えて、8月11日に行われた大統領選挙の予備選挙結果後の通貨急落といった市場の混乱など、予期しない事態に耐えられない政策もあったことを認めた。

(山木シルビア)

(アルゼンチン)

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