欧州議会、ブレグジットをめぐりバックストップ条項撤廃拒否を決議

(EU、英国)

ブリュッセル発

2019年09月19日

欧州議会・本会議は9月18日、欧州委員会のジャン=クロード・ユンケル委員長とミシェル・バルニエ首席交渉官をストラスブールに招いて、英国のEU離脱問題をめぐる最新状況について報告を受けた。また、「英国のEU離脱(ブレグジット)までに離脱協定案の妥結は可能か」などをテーマに集中審議し、各会派代表がそれぞれの見解を明らかにした上で、北アイルランド地域での国境管理の厳格化を回避するためのバックストップ条項を除外した「離脱協定」案(2019年8月21日記事参照)を認めない決議外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますを採択した。

ブレグジット以降の経済関係にEUの法令・基準が英国に影響する可能性を示唆

英国のボリス・ジョンソン首相は、合意の有無にかかわらず、10月31日にブレグジットに踏み切る方針。前日の9月17日に同首相と会談を行ったユンケル委員長(2019年9月18日記事参照)は、ノー・ディールのリスクが「現実的なまま」との見解を示した。ただし、同委員長は「今なすべきは、できるだけ望ましいかたちでの妥結の道を探ることで、それは実現可能なことと考えている」とも付言。今後の協議継続に期待感も示した。

これに続いて、バルニエ首席交渉官は「バックストップ条項」「EU・英国の将来関係」を中心に報告した。英国政府が「離脱協定」案からバックストップ条項を除外することを求めている点については、英国側からの代替案の提示は歓迎するとの従来方針を繰り返した。また、ブレグジット以降の英国との経済関係については、交渉の出発点としては「自由貿易協定」を想定しているが、「関税同盟」などより野心的な枠組みについても検討する用意はあるとした。ただ、経済関係について、同首席交渉官は「公平な競争環境」の保障が前提にあるとも指摘。ブレグジット以降もEU基準を下回ることのない規格・基準や法整備を英国に求める考えを示唆した。

他方、欧州議会・最大会派「欧州人民党(EPP)グループ」(中道右派)のマンフレート・ウェーバー議員(ドイツ選出)は「(ブレグジットは)英国が単にEUを去るわけではない。雇用や産業・企業が英国を去るのだ。英国に所在する企業の約3分の1は移転・撤退に着手あるいは検討している」と、厳しい発言を行った。同議員に限らず、EPPグループ関係者からは、ブレグジットについて厳しい見通し(2019年9月17日記事参照)が聞かれる。

また、欧州議会・第2会派「社会・民主主義進歩連盟(S&D)グループ」(中道左派)のイラチェ・ガルシア・ペレス代表(スペイン選出)は「政治的指導者の失政の代償を一般(EU)市民が払わされるべきではない」と述べ、ジョンソン首相に英国で生活するEU市民の権利保障を強く要請するとした。

このほか、欧州議会・第3会派「リニューヨーロッパ」(穏健リベラル派)所属で、同議会・ブレグジット問題対策グループの座長を務めるギー・フェルホフスタット議員(ベルギー選出)は「離脱協定の妥結は今でも可能だが、市民の権利をもてあそぶかのような英国政府の対応は批判されるべき」と主張。また、「EU・英国の将来関係」については「(ブレグジット以降)英国だけが環境・安全衛生・社会関係のEU基準に従わずに、(EU27カ国との)関税のかからない自由貿易のメリットは受ける状況を欧州議会が認めることはない」と、厳しい姿勢を打ち出している。

(前田篤穂)

(EU、英国)

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