英国議会が再開、超党派議員がEU離脱延期法案を提出へ

(英国、EU)

ロンドン発

2019年09月03日

英国議会は9月3日、夏季休会を終え、議会日程を再開する。英国のEU離脱(ブレグジット)をめぐる情勢が緊迫する中、政府と議会の攻防が正念場を迎える。

下院ブレグジット委員会のヒラリー・ベン委員長(労働党)は9月2日、合意なき離脱(ノー・ディール)を阻止するため、議会に提出する法案を公表した。4月の離脱延期法案採決(2019年4月4日記事2019年4月11日記事参照)と同じく、離脱延期を法的に義務付ける。政府に与えるEUとの交渉期限は、10月17、18日に予定されている欧州理事会の翌日の19日に設定。新たな離脱期限は、現行期限から3カ月先の2020年1月31日とした(表参照)。

表 政府にブレグジット延期を義務付けるヒラリー・ベン議員法案の内容(9月2日公表)

法案の推薦人には、自由民主党や緑の党などの議員に加え、フィリップ・ハモンド前財務相、デービッド・ゴーク前法相ら与党・保守党のノー・ディール反対を訴える重鎮らも名を連ねた。保守党執行部は、同党議員が野党法案に賛成すれば除名する考えだが、ゴーク前法相やEU残留支持派のジャスティン・グリーニング元教育相らはメディアに対し、締め付けは意に介さない考えを示している。与党は議会でわずか1議席の過半数を維持しているにすぎない中、造反が見込まれる同党議員は最大20人前後とみられ、可決される可能性は十分にある。法案は9月3日に提出され、ジョン・バーコウ下院議長の裁定を経て審議にかけられ、4日にも採決が行われる見込み。

一方、ボリス・ジョンソン首相は2日夕、緊急の閣議に続けて首相官邸前で報道陣に対して声明を発表。首相は「いかなる状況でも私がブリュッセル(の欧州理事会)に離脱延期を求めることはない。10月31日に必ず離脱する」と強調。選択肢からノー・ディールを除外すれば、EUから譲歩を引き出すことができなくなるとして、野党に同調しないよう、保守党議員に訴えた。

ジョンソン首相はさらに、「私は望んでおらず、皆も望んでいない総選挙」を伴わずに10月の欧州理事会で合意できるよう、交渉を続けるべきとの考えを示し、離脱延期の法案が可決されれば、解散総選挙に踏み切る可能性もあることを示唆した。BBCによると、政府は10月14日を選挙の候補日と考えているもよう。解散には議会の3分の2以上の賛成が必要。

ジョンソン首相はこれに先立つ8月28日、9月9日の週から10月13日まで議会を休会と決め、同日、エリザベス女王が承認している。10月14日の再開後数日は、同日の女王による議会演説に関する審議と採決が続くため、議会がノー・ディール阻止に動ける時間は、9月上旬と10月下旬しか残されていない。

(宮崎拓)

(英国、EU)

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