中国の1~7月の対米輸入、大豆の減少が最大の押し下げ要因、データでみる米中貿易摩擦

(中国、米国)

中国北アジア課

2019年09月10日

2019年1~7月の中国の米国からの輸入額は、前年同期比27.0%減の698億7,085万ドルとなった。減少幅は、中国の輸入額上位20カ国・地域で最大だった。なお、7月単月では132億6,161万ドルで、前年同月比18.0%減となった。

輸入品目の上位15品目(HSコード6桁ベース)をみると、追加関税措置の非対象品目はおおむね増加した(添付資料の表参照)。集積回路、ターボジェット、半導体デバイス(HS848690に該当するもの)など、中国での各種生産活動に必要な中核の部品・材料が目立つ。

他方で、第1~3弾で追加関税が賦課されている大豆、美容製品、綿、化学木材パルプは、美容製品(58.4%増)を除き、大幅に減少した。また、これらは中国政府が8月23日に発表した第4弾の対米報復措置(2019年8月28日記事参照)の対象品目に該当し、5%または10%の関税がさらに加算されることから、減少幅が今後、さらに拡大する可能性もある。

対米輸入額の最大の押し下げ要因となったのは大豆で、前年同期比60.1%減、寄与度がマイナス4.3だった。トランプ大統領が、中国の大豆の購入が進んでいないなどと不満を表し、第4弾の追加関税の発動を表明したことを受け、中国政府は8月6日に、中国企業が米国からの農産物の購入を暫定的に停止したと発表した(2019年8月7日記事参照)。

米国産の大豆は9月半ばごろから収穫期を迎え、例年は輸入額も同時期から拡大して12月ごろにピークを迎える。2018年には、大豆の対米輸入のほぼ全量を占める黄大豆が第1弾対抗措置の対象となり、同年7月6日から25%の追加関税が課され、本来の輸入拡大期である秋以降も盛り上がることなく低迷が続いた(添付資料の図参照)。2019年は、収穫期を目前に、9月1日からさらに5%の追加関税が加算され、合計30%の高関税が追加で課されている。

7月28日付の「新華社」の報道では、米国産大豆の最大の輸出先は中国で、一方で中国の大豆自給率は約1割で米国産大豆の供給が不可欠なことから、大豆を米中双方の「公約数(双方にメリットをもたらすもの)」と表現していた。米中の貿易摩擦が一層激しさを増す中、中国政府が大豆の大量購入に再度動くのか、注目が集まる。

なお、中国にとって最大の大豆輸入先であるブラジルや、輸入額が激増しているアルゼンチン(2019年1~7月は前年同期比7.1倍)は、南半球に位置することから収穫期が米国とは真逆の時期となる。中国はさらなる代替先として、カナダやロシアなどからも輸入拡大を図っている。

(小林伶)

(中国、米国)

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