ノー・ディール時の想定最悪シナリオに関する内部文書を公開

(英国)

ロンドン発

2019年09月13日

英国政府は9月11日、EUとの合意なく離脱した場合(ノー・ディール)の緊急計画「イエローハンマー作戦」に関連する政府文書PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)を公表した。この文書は内部文書として作成されていたが、8月18日付の「タイムズ」紙が文書の存在を報じていた。議会閉会前の9月9日に、ドミニク・グリーブ元法務長官が政府に同文書の公表を求める緊急動議を提出し、可決されていた(2019年9月10日記事参照)。

公表された文書は、8月2日付の「計画立案のための合理的な最も悪いケースの想定」と題されている。輸送の面では、ドーバートンネルを通るトラックなど重貨物車両の流通が最大3カ月間にわたり、通常の水準の40~60%まで低下すると試算された。ドーバートンネルが位置するイングランド南東部のケント州には大渋滞が起こり、フランスとの国境を通過するまでに最大2.5日を要するとされている。また医薬品は、4分の3がドーバートンネル経由で流通しており、かつ、使用期限が短い製品も多ことから、在庫の積み上げだけでの対応は難しいとされた。食料品については、生鮮食品の一部の流通が減少するほか、食糧不足には陥らないものの、流通する種類が減ることから食品の選択幅が狭まるとし、価格上昇によって、特に低所得者層に影響が出る可能性があると指摘している。さらに、人の移動に関しても、国境検査が増加するため、ユーロスターが発着するセント・パンクラスなどの駅や、空港・港湾での交通の遅延が発生する影響があるとされる。

なお、政府は9月からブレグジットへの準備を促進するキャンペーン「ゲット・レディ・フォー・ブレグジット」を開始しており、ウェブサイトから閲覧者が分野ごとのガイダンスを閲覧できるポータルサイトなど拡充している(2019年9月4日記事参照)。

(木下裕之)

(英国)

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