大統領がコンテ首相に組閣指示、連立政権樹立へ調整は難航

(イタリア)

ミラノ発

2019年09月02日

イタリアの第三極の五つ星運動(M5S)と中道左派の民主党(PD)は8月28日、連立政権樹立で合意し、セルジョ・マッタレッラ大統領は翌29日、ジュゼッペ・コンテ氏を首相に指名、同月20日に辞意を表明した同氏の首相続投が決まった。今後、閣僚人事の選定を含め、正式な組閣を目指して詰めの調整が行われるが、依然不透明な情勢が続いている。

連立政権崩壊後、混迷が続く

コンテ氏が首相辞任を表明したことを受け、M5SとPDは次期連立政権樹立に向けて交渉を続けていた(2019年8月23日記事参照)。一方、首相の人選などをめぐって調整は難航。M5Sのルイジ・ディマイオ党首はコンテ氏の再任を求めたのに対し、PDのニコラ・ジンガレッティ党首は「転換点が必要だ」として反発。両党の交渉不成立による総選挙実施の可能性も残されていた。

その間、これまでM5Sと連立政権を組んできた同盟(Lega)の党首マッテオ・サルビーニ前副首相は、回答者の過半数が総選挙の実施を求めていることを映した世論調査などを基に、総選挙の実施を主張。シルビオ・ベルルスコーニ元首相が率いるフォルツァ・イタリア、ジョルジャ・メローニ党首が率いるイタリアの同胞などの右派勢力も、引き続き総選挙の実施を強く求めていた。

そんな中、ジンガレッティPD党首は8月28日に行われた2回目のマッタレッラ大統領との面談を前に、徐々に姿勢を軟化。面談後に正式にコンテ氏の首相再任に同調することを表明し、連立政権成立に向けて大きく前進した。M5SとPDの意向を受けて、マッタレッラ大統領は29日、両党による新たな連立政権を率いる首相にコンテ氏を指名、組閣を命じた。コンテ氏の首相再任に当たっては、米国のトランプ大統領もツイッター上で支持をするなど、動向に注目が集まっていた。組閣の指示を受けて同日、コンテ氏は各党との面談を開始。今週半ばにも閣僚案を大統領に提出すると報じられている。

M5SとPDの連立政権が正式に発足した場合、これまで政治的立場が異なってきた両党が政策面でいかに歩み寄れるかが焦点となる。一方、30日にコンテ氏との面談を終えたM5Sのディマイオ党首は「M5Sの政策を実行するか、そうでなければ選挙だ」との強硬な姿勢を見せ、一時漂った協調ムードが危ぶまれるかたちとなった。今後のM5SとPDの動き、さらにはコンテ氏の判断に注目が集まる。

(山崎杏奈)

(イタリア)

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