コンテ首相が辞任、大統領らが次期政権樹立を模索するも、情勢は不透明

(イタリア)

ミラノ発

2019年08月23日

イタリアの右派政党で連立与党の「同盟(Lega)」が上院に提出した内閣不信任案をきっかけとして、ジュゼッペ・コンテ首相は8月20日、セルジョ・マッタレッラ大統領に辞表を提出した。大統領と各政党間で新政権の樹立または総選挙に向けての調整が続くとみられる。

連立政権の不和

2018年3月の総選挙の結果、第1党となった第三極の左派「五つ星運動(M5S)」と、マッテオ・サルビーニ党首が率いる「同盟」が連立。フィレンツェ大学教授で弁護士のコンテ氏を首相に据えて、同年6月に政権が発足した(2018年5月25日記事参照)。「EUに懐疑的」という立場では両党は一致していたものの、政策面の相違は多く、意見対立が続いた。不和を特徴付けたのは、イタリアのトリノとフランスのリヨンをつなぐ高速鉄道(TAV)建設計画での対立だ。五つ星運動はコストと環境配慮を理由に8月7日、この計画に反対する動議を上院に提出したものの否決。計画に前向きだった同盟は動議に反対票を投じた。

コンテ首相の辞任を受けて、マッタレッラ大統領は21日から各党と個別に会談、議会で過半数を占めることのできる勢力構成と首相候補を探っていく。秋からは次年度の予算編成に議論を移す必要がある中、政権不在の期間を短期化させたいためとみられる。

8月22日付「イル・ソーレ24」紙は、大統領は五つ星運動と中道左派の民主党(PD)の新連立政権の可能性を模索、組閣が困難な場合は総選挙に移るとの見方を報じている。民主党は連立政権への意欲を示しているが、五つ星運動にEUとの協調、移民政策、経済・社会政策の転換などの条件を提示しており、EUに懐疑的な立場をとってきた五つ星運動側がこれ応じるかは不透明だ。

従来、五つ星運動と民主党は政治的立場では相容れない関係だった。例えば、前回の総選挙の際、民主党は子供のいる世帯に対する税控除を公約の1つとして掲げたが、これは五つ星運動の考え方とは正反対のものだとみられていた。五つ星運動と民主党の連立政権が成立した場合、コンテ政権と同様、歩み寄りの協調による政権運営を余儀なくされる。また、民主党のジンガレッティ党首はコンテ首相の再任に反発しており(「イル・ソーレ24」紙8月21日)、首相候補の選定も難航しそうだ。

「イル・ソーレ24」紙は経済界の声として、誰が政権を担うかではなく何をするかが大切であり、ドイツ経済の減速や米中の貿易摩擦などによるイタリア経済への影響が懸念される中、次期政権の確実な経済政策を望むとのイタリア経団連・コンフィンドゥストリアのコメントを報じている(8月22日付)。

(山崎杏奈)

(イタリア)

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