循環型経済に向け、プラスチック・リサイクルを本格化する欧州産業界

(EU)

ブリュッセル発

2019年09月05日

欧州化学工業連盟(Cefic)は9月4日、プラスチック廃棄物を化学的に分解して新たな化学素材に還元する「ケミカルリサイクル」の導入・展開に向けた機運が、欧州化学産業で高まっているとの認識外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますを明らかにした。Ceficは、米国化学大手ダウが8月29日付で公表した、オランダ生産法人でのポリマー生産にプラスチック廃棄物から精製した熱分解油を採用するための現地企業との提携戦略外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますを紹介、これに追随する企業の動きに期待感を示した。

ダウは、オランダのプラスチック・リサイクル事業者であるフュエニクス・エコジー(本社:オランダ南東部ベールト)と契約を結び、プラスチック廃棄物から精製した熱分解油を調達、オランダ南西部のダウ・テルノーゼン工場でのポリマー生産に活用する。これにより、食品パッケージなど多様なプラスチック廃棄物に長期的な再利用の道を開くことが期待されるという。ダウは、2025年までにEU域内で供給する同社製品に最低でも10万トンのリサイクル・プラスチックを採用する方針で、今回の提携契約がこの実現を後押しすると指摘する。

Ceficによれば、ケミカルリサイクル技術の活用により、(1)プラスチック廃棄物の総量削減、(2)新たな化学品製造時の石油など再生不可能な資源への依存を減らす効果が期待でき、一石二鳥だとしている。また、これまでも行われてきたペットボトル・リサイクルなどの手法と併用することで、プラスチックの循環性を高め、プラスチック廃棄物の削減を促進するとしている。

ただし、在欧日系化学企業は「ケミカルリサイクル技術の実用化は理想だが、プラスチック廃棄物の資源としての品質には大きな幅があり、その事業上の採算性を担保することは容易ではない」とする。

EU域内の関係産業界も一体として対応姿勢を示す

なお、プラスチック廃棄物リサイクルに関連しては、欧州委員会が2018年12月11日に立ち上げた30の関係機関からなる「循環型プラスチック同盟外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます」が、2025年までにEU域内での製品生産に1,000万トンのリサイクル・プラスチックの採用を目指す方針を掲げている。具体的には、(1)プラスチック廃棄物の回収・分別、(2)リサイクルを前提とする製品設計、(3)製品中のリサイクル・プラスチック採用量の増加、(4)ケミカルリサイクルを含む研究開発・投資、(5)EU域内で流通するリサイクル・プラスチックの監視、の5項目について、連携を進める方針を示している。参画機関の1つである欧州自動車部品工業会(CLEPA)も9月3日付の声明外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますで、9月20日に開催予定の同連盟のハイレベル会合において同趣旨を盛り込んだ宣言が採択されることを紹介し、欧州での協力態勢強化の方針を明らかにしている。

(前田篤穂)

(EU)

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