主要経済イベント「クラスノヤルスク経済フォーラム」、開催取りやめか

(ロシア)

欧州ロシアCIS課

2019年09月05日

ロシアの主要な経済イベントの1つである「クラスノヤルスク経済フォーラム(KEF)」は、2020年以降の開催が取りやめとなるようだ。コンスタンチン・チュイチェンコ内閣官房長官がこのほど、メドベージェフ首相に対してKEFの開催中止に関する書簡を送付し、同首相がこれに合意したと、ロシアの主要ビジネスメディアRBKなどが9月2日に報じた。

KEFは、毎年春にシベリアの百万都市の1つであるクラスノヤルスクで開催されている、サンクトペテルブルク国際経済フォーラム(SPIEF)、ウラジオストクでの東方経済フォーラム(EEF)、ソチでのロシア投資フォーラム(RIF)に並ぶ、ロシアの主要な経済フォーラムの1つ。2004年4月に「地域発展投資フォーラム」という名称で始まり、当初は地域レベルのフォーラムにすぎなかったものが、次第にロシアの政治家・実業家にとって重要なイベントとなり、2008年2月には当時、大統領選挙の候補者だったメドベージェフ第1副首相(現首相)が、KEF内で、国家経済発展プログラムとして「4つのi」(制度、インフラ、イノベーション、投資)を発表するなど、世界に注目される出来事もあった。2019年は3月28~30日に開催され、約9,000人が来場。ドミトリー・コザク副首相が実行委員長を務めた。

取りやめの理由について、イリヤ・ジュス連邦政府報道官(コザク副首相付)は「連邦レベルの経済フォーラムは喫緊のテーマに柔軟に対応するかたちに変えていかなければならない」とし、クラスノヤルスク地方のアレクサンドル・ウス知事も「KEFの形式については以前から議論に上っており、シベリアをテーマの中心とするコンパクトなものの方が望ましい」と述べ、現在のKEFの在り方が連邦と地方の双方のニーズに合致したものではなくなっているとの意見が出されている。また、KEFでの合意文書の契約総額は6,000億ルーブル(約9,600億円、1ルーブル=約1.6円)程度で他の主要フォーラムに比べて小さく(SPIEF3兆2,700億ルーブル、RIF9,680億ルーブル)、また、合意文書の多くが、クラスノヤルスク地方、ハカシア共和国、トィワ共和国が中心のエニセイ川流域開発プロジェクト「エニセイ川のシベリア」に関連したものであることも影響しているとみられる(「RBK」9月2日)。

筆者は2017年4月に開催されたKEFに参加したことがあるが、テーマはロシアの経済政策に関する連邦レベルのものである一方、参加者の大部分はシベリア地域の企業で、特にニッケル世界大手ノリスクニッケルやアルミニウム世界大手ルスアルなど、クラスノヤルスク地方に主要拠点を持つ企業が目立った。また、参加している外国人の多くは中国人だった。

写真 2017年のクラスノヤルスク経済フォーラム(全体会合)の様子(ジェトロ撮影)

2017年のクラスノヤルスク経済フォーラム(全体会合)の様子(ジェトロ撮影)

KEFに代わるかたちで、今後、国家プロジェクトに関するフォーラムが年1回開催される見込みだ。第1回はタタルスタン共和国の首府カザンにおいて2020年4月に実施され、第2回は2021年にニジュニ・ノブゴロドで開催されると報じられている(「コメルサント」紙9月2日)。

(齋藤寛)

(ロシア)

ビジネス短信 96bcc5e2d70aa431