中国越境EC大手のアリエクスプレス、マドリードに欧州初の実店舗オープン

(スペイン)

マドリード発

2019年09月06日

中国の電子商取引(EC)大手アリババ集団の国外消費者向け越境ECサイト「アリエクスプレス(Aliexpress)」は8月25日、スペイン・マドリード近郊の複合商業施設「イントゥ・シャナドゥ」に欧州初の実店舗を開いた。

740平方メートルの店内に、モバイル機器やドローン、電動キックボード、ゲーム、家電などの最新売れ筋商品1,000点を展示。取り扱いメーカー数は69社で、ファーウェイやアップルなどの大手のほか、欧州展開を目指す中国メーカーや、スペインメーカーの専用コーナーも設置している。店舗の責任者は「スペインの消費者はお得で良い商品を求め、実物をじっくり見てから購買決定を行う傾向が強く、実店舗を通じて、より身近に感じてもらうことが狙い」と話す。

実店舗や大手百貨店との提携でプレゼンス向上

アリエクスプレスにとって、サイト利用者数が1,000万人を超えるスペインは、ロシア、米国に次ぐ重要市場だ。2018年には、アリババが毎年11月11日に開催する「独身の日」セールで、売上高が世界2位となった。

他方、専門誌「eShow」の統計によれば、アリエクスプレスは、スペインでは2位のECサイトではあるものの、2018年の売上高は推定14億ユーロ、注文件数は3,408万件で、首位のアマゾン(45億ユーロ、9,438万件)に大きく水を開けられている。

最大の課題は配送スピードだ。アマゾンがスペインを南欧物流ハブと位置付け、5カ所の物流拠点と地方配送網を持ち、即日配達にも対応するのに対し、アリエクスプレスは物流倉庫1カ所のみ。商品の多くが中国から配送され、届くまで通常10日かかる。アフターサービス拠点がないため、欠陥品や模倣品など通販サイトに付き物のリスクへの対処や、返品対応もきめ細かにはできない。実店舗では3日以内の配送が可能な商品を扱い、対人サービスを拡充することで、弱点の克服に努める。

アリババ集団は2018年11月に、売上高世界3位の百貨店エル・コルテ・イングレスと、小売網、デジタル化、クラウドサービス、電子決済といった、グローバルネットワーク構築に関する複数の分野にわたる提携で、基本合意書を結んだ。互いの強みであるグローバルECサイト網と百貨店の実店舗網を活用し、デジタルリテールと、実店舗とECサイトといった複数の販路を有機的に連携させる、オムニチャンネル戦略の相互補完を目指す。

同百貨店はスペイン国内3位のECサイトも展開し、売上高はアリエクスプレスとほぼ互角だ。アマゾンも2018年11月にマドリードで5日限りのポップアップストアを開くなど、将来的には実店舗展開も予想される中、ECサイト2位と3位が手を取り合い、アマゾンに対抗する構図となっている。

写真 アリエクスプレスのマドリード実店舗「アリエクスプレス・プラザ」(スペイン・アリエクスプレス広報担当提供)

アリエクスプレスのマドリード実店舗「アリエクスプレス・プラザ」(スペイン・アリエクスプレス広報担当提供)

(伊藤裕規子)

(スペイン)

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