イラン、核合意で定められた履行義務停止の第3弾を発表
(イラン)
テヘラン発
2019年09月10日
イランのローハニ大統領は9月4日、「核合意(JCPOA:共同包括行動計画)で定められた履行義務停止の第3弾として、核開発研究の制限を全て放棄するよう指示した」と発表した。これを受けて、イラン原子力庁のカマルバンディ報道官は9月7日、その具体的な内容について発表した。発表内容のポイントは次のとおり。
- 欧州(EU)からのイランに対する支援が不十分なことから、今回の第3弾の履行義務停止に至ったもの。
- 具体的には、高性能の遠心分離器を、研究開発目的として稼働。
- イランはウラン濃縮レベルを20%以上に引き上げる能力を有するが、現時点で実行する計画はない。
- JCPOAの義務履行停止・逸脱については、いつでも元に戻すことができる。
- 欧州はさらに60日間の猶予が与えられる。
8月末のG7開催期間中に、フランスのマクロン大統領がイランのザリーフ外相と会談するなど事態の打開に向けての動きがあったほか、石油収入を担保とした上限150億ドルのイランへの融資案についての報道もある中、従前の報道でも伝えられたとおり、ウラン濃縮度の引き上げに関する具体的な発表はなく、関係国に対して一定の配慮があったものとみられる。
これまでイラン政府は、米国が核合意から離脱して1年が経過した2019年5月8日に、JCPOAで定められた履行義務の一部停止を発表して以降、同日から60日という期限を設け、7月には第2弾として(1)低濃縮ウラン貯蔵量上限(300キロ)と(2)ウラン濃縮度上限(3.67%)の順守、という2つの履行義務の停止について発表していた。
参考:濃縮ウラン濃度(原子力発電所などで燃料として利用できる「ウラン235」の濃度)
- 天然ウラン:0.7%程度
- 原子力発電所用燃料:3~5%
- 高濃縮ウラン(核開発研究などで使用):20%以上
- 核兵器用:90%程度
なお、イラン政府は7月時点で、ウラン濃縮度を4.5%を超えて5.0%程度に引き上げる旨を発表済みだ。
(中村志信)
(イラン)
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