パナマ運河の通行料金改定時期と一部値上げ幅の変更を決定

(パナマ)

メキシコ発

2019年09月24日

パナマ政府は9月6日の閣議で、2020年1月に予定されていたパナマ運河通行料金の改定時期の変更を決定した。1月から4月に変更となるのは、液化天然ガス(LNG)タンカー船や液化石油ガス(LPG)タンカー船と、ネオパナマックス型(注)の自動車船・Ro-Ro船で、前者は運河庁の当初の発表どおり5~15%値上げされる。後者は当初の15%から12%に値上げ幅が引き下げられることになった。なお、観光船の料金改定時期は1月から5月に変更され、その他の小型船などは予定どおり1月に改定される。

パナマ運河の通行料金は、船舶種別、コンテナ積載可能容量(TEU)、積載重量トン数(DWT)などにより規定されている。同運河では、第3閘門(こうもん)拡張工事後の2016年6月26日に、LNG船などのネオパナマックス型の通行が可能となった。これに合わせて、現在の料金体系は2017年10月1日に改定された。2020年の料金改定に向けて、運河庁は2019年6月15日~7月15日にパブリックコメントを募集し、日本の海運業界からは日本船主協会が値上げ幅の圧縮を要請していた。今回の料金改定時期の延長と一部の料金改定率の圧縮の発表を受け、同協会は9月10日、「2020年4月施行としたことは、結果として(改定日からパブコメまでさかのぼると)10カ月前予告の実現であり評価したい。日本においては年間輸送契約が4月に更改されるものも多く、運河利用者のニーズに合致した対応に謝意を表する」とのコメントを発表した。

ネオパナマックス型の約3割がエネルギー運搬船

運河庁によると、2018年のネオパナマックス型の運河通行船種別シェアは、通行料ベースで約6割がコンテナ船で、LNGタンカー船が16%、LPGタンカー船が12%、石油タンカー船が3%と続き、約3割がエネルギー運搬船だった(図1参照)。ネオパナマックス型は船舶の規模が大きいため、パナマックス型と比べて通行料金が高い。そのため、2018年における前者の通行数は、後者の約4分の1(それぞれ2,643船、1万1,049船)だったが、運河庁の通行料収入を比較すると、前者が約50%を占めた(図2参照)。パナマ政府にとって、ネオパナマックス型の通行料改定は国庫収入を増やす手段として有効なことがうかがえる。

図1 パナマ運河通行船種別シェア
図2 パナマ運河の通行料の推移とネオパナマックスのシェア

(注)パナマックス型とは、パナマ運河の第1および第2閘門を通行できる船の最大サイズで、ネオパナマックス型とは、拡張工事によって完成した第3閘門を通行できる最大サイズを指す。

(志賀大祐)

(パナマ)

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