知られざるケッパー大国、若手企業家が加工輸出を拡大

(ウズベキスタン)

タシケント発

2019年09月20日

最近、日本でも独特な風味を持つ薬味として知られ、幅広い料理に使われるようになったケッパー。ウズベキスタンが世界でも有数の生産国であることは知られていない。ほんの最近まで、原材料(未加工)のままトルコや欧州に売られ、同地で加工・販売・世界へ再輸出されていたためだ。このような状況に目を付け、ウズベキスタン国内でケッパーを加工し、世界最大市場の米国へ直接輸出を初めて開始した企業がある。ケッパーの加工輸出に取り組む「コテリア・フーズ」の共同創設者であるアクマル・アミノフ氏に話を聞いた(9月14日)。

写真 アクマル・アミノフ氏(37歳)。新潟への留学経験もある、新しい世代の起業家だ(ジェトロ撮影)

アクマル・アミノフ氏(37歳)。新潟への留学経験もある、新しい世代の起業家だ(ジェトロ撮影)

(問)ビジネスを始めた経緯について。

(答)私が商業銀行、投資銀行や外国政府系投資基金、国際金融機関で勤務する中で、ウズベキスタンのケッパーの輸出構造を知った。ケッパーは、そのポテンシャルに比べて安い金額で輸出され、非常に大きな利ざやを第三国で抜かれた後、欧米で販売されている。われわれは、ケッパーを直接マーケットに販売できると考え、2015年6月に投資家も含め3人で会社を設立。2016年にスペイン向けの原材料販売に成功した後、最大市場といわれる米国向け輸出に取り組んだ。

(問)米国向け輸出への取り組みについて。

(答)米国向け輸出の前提条件をそろえるため、2017年にトルコから設備を導入し、2018年にウズベキスタンから90.8トンの輸出に初めて成功、2019年の出荷は257トンの見通し。2020年はさらに500トン程度まで伸ばす。2018年9月にはISO22000(食品安全マネジメント)、同10月にはコーシャ(注)認証を取得した。2019年6月にはオーガニック認証(エコサート)を取得している。また、輸出入手続きの利便性を確保するため、米国に関連会社を設立した。現在は米国の取引先のブランドで販売されているが、2、3年以内に自社ブランドを確立し、現地での小分け・瓶詰め作業を行って、コストコやウォールマート向けの納入を目指す。

(問)ケッパーの市場性、日本向けへの関心について。

(答)当社の調査によると、ケッパーの世界での生産量は約1万トンから1万2,000トン程度。生産量1位はモロッコで、2位がウズベキスタン、3位がレバノンやキルギスとなっている。ウズベキスタンの潜在的な生産量は約6,000トンで、米国の年間のケッパー消費量をカバーできる。他国向け出荷にも関心があり、アジアでは徐々にケッパーの認知が進んできた日本市場への供給に関心がある。日本向けの出荷は、現在は北アフリカ(エジプト)のアレクサンドリア港などから行われていると聞いている。

(答)国内での製造の課題、今後の予定など。

(問)産地からの輸送コストを削減するため、米国向け輸出拡大とともに、産地に近い場所への工場の移転を予定している。地方の地区レベルでは企業活動そのものへの理解が進んでいない部分もあるが、リスクを避ける選択肢はあると思う。また、現在はケッパーのマリネ(塩漬け)を製造・輸出しているが、付加価値をより高めるため、ドライ・ケッパー、粉末ケッパーの試作を開始している。ケッパーエキスなどに関心のある企業があれば、ビジネス化を検討したい。

ケッパーの洗浄工程(ジェトロ撮影)

ケッパーの洗浄工程(ジェトロ撮影)

(注)ユダヤ教の戒律に基づく食規定。

(高橋淳)

(ウズベキスタン)

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