EUから英国への移民、ピーク時の3分の1以下に

(英国)

ロンドン発

2019年09月05日

英国の国民統計局(ONS)は8月22日、2018年4月1日から2019年3月31日までの1年間の移民統計(注)を発表した。この期間に、新たに国外から英国に流入した移民は61万2,000人、流出した移民は36万6,000人で、純移民流入は24万5,000人となった(図1参照)。これをEUとEU域外とで分けてみると、EUからの純移民は5万9,000人、EU域外からの純移民は23万8,000人となった。また、英国籍者の純移住はマイナス5万2,000人となった。EU域外からの移民数はほぼ横ばいな一方、英国籍者の流出が続いている。

図1 英国に流入・流出する移民数の推移(各四半期末までの1年間の移民数の推移数)

EUからの流入移民数は2016年6月の国民投票を境に減少傾向に転じた。2016年6月末までの1年間に28万4,000人でピークだった流入者数は、2019年3月末までの1年間では20万人となった一方、流出数は2016年9月末の統計以降、10万人を超えるようになり、当期は14万1,000人に達した(図2参照)。この結果、EUからの純移民数もピークだった2016年6月末時点の18万9,000人から、当期は5万9,000人と最盛期の3分の1以下に落ち込んだ。EUからの移民の急速な減少傾向に対して、英国産業連盟(CBI)のマシュー・フェル政策責任者は「熟練労働者の不足の悪化を意味している」と、「ガーディアン」紙(8月22日)で懸念を表明している。

図2 EU移民数の変化(2015年3月末までの1年間~2019年3月末までの1年間) 

なお、英国政府は1月28日に、EU離脱後の欧州経済領域(EEA)市民の入国・滞在に関する政策を公表している(2019年1月28日記事参照)。これによれば、離脱日までに英国に5年間継続的、かつ合法的に居住したEEA市民およびその家族は、「定住資格(settled status)」を申請することによって、無期限に滞在することができる。また、EEA市民向けの永住権の制度は廃止され、既に永住権を取得しているEEA市民とその家族は、その資格を「定住資格」に変更する。

内務省は8月15日、3月30日から導入しているこの登録手続きには英国在住の100万人以上のEEA市民が既に登録済みであることを明らかにした(7月末現在)。地域別内訳はイングランドが95万人、スコットランドが5万人、ウェールズが1万5,000人、北アイルランドが1万2,000人だった。

(注)「移民(migration)統計」という名称だが、総数には英国籍者の移住(転出、転入)も含まれる。

(岩井晴美)

(英国)

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