11月10日に再選挙、政権空白に景気への不安高まる

(スペイン)

マドリード発

2019年09月25日

スペイン国王のフェリペ6世は9月24日、議会両院を解散し、11月10日の総選挙実施を公示する勅令を公布した。ペドロ・サンチェス首相率いる中道左派与党・社会労働党(PSOE)は7月下旬の首相信任投票の否決後(2019年7月26日記事参照)も、急進左派ポデモス党をはじめとする野党との政権樹立交渉で妥協点を見いだせず、再度の信任投票が行われないまま23日の期限を迎えた。憲法では、最初の信任投票から政権樹立までの期限は2カ月と定めており、国王による首相候補の再指名と下院での再投票を繰り返す規定となっているが、今回は政権樹立に足る支持を得る首相候補者がいないと判断し、翌24日に議会解散・再選挙の実施を公示することとなった。

サンチェス首相は19日のテレビインタビューで、「(連立協議していた)ポデモス党とは、多くの政策で共通しているが、カタルーニャ問題で独立賛成派に理解を示すなど、PSOEと決定的な相違があり、(政権ができても)短命に終わるのは明らかだった。再選挙に対する国民の批判は理解できるが、スペインには安定した政権が必要だ」と説明した。報道によると、最大野党・民衆党(PP)をはじめとする野党は、サンチェス首相にはそもそも政権交渉の意思はなく、最初から選挙のやり直しを狙っていたと批判している。

政権発足は早くても12月中旬

直近の世論調査では、2大政党であるPSOEとPPの支持率が上昇する一方、新興政党の市民党(C’s)、ポデモス党、極右ボクス党の支持は下降傾向にある。少数与党のPSOEは再選挙で議席増を目指すが、投票率の大幅低下も懸念されており、左派だけで下院過半数を押さえる可能性は低く、4月に行われた前回総選挙と同様、行き詰まり状態が続くリスクもある。

11月10日の再選挙を受けて政権が成立すれば、早くても12月中旬の組閣となる。しかし、政権合意がまとまらず、2020年3月ごろに再々選挙という可能性も排除できない。

選挙の結果にかかわらず、2019年内の予算編成が見込めないため、2020年の国家予算は2018年予算が2年連続で延長されることが確実視されている。最大の懸念は、地方交付金が改定されず、自治州予算が大幅な緊縮を迫られることだ。これに伴う教育や医療の支出削減、サプライヤーへの支払い遅延は国民生活や企業活動、雇用に大きな打撃となる。

また、英国の「合意なきEU離脱」や米中貿易摩擦、世界経済の減速が貿易や観光に深刻な影響を及ぼすおそれがある中、暫定政権では効果的な対策を打ち出せない。

シンクタンクのBBVAリサーチは「政治不安による経済活動への影響はこれまで限定的だが、景気減速や世界経済の見通しが不透明な中、雇用・再成長のための改革を通じて景気減速に歯止めをかけることが必要」と指摘している。

(伊藤裕規子)

(スペイン)

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