連立交渉不調で首相続投否決、11月に再選挙の可能性

(スペイン)

マドリード発

2019年07月26日

スペイン下院は7月25日の首相信任投票(注)で、現職ペドロ・サンチェス氏の再任について、反対155票、賛成124票、棄権67票で否決した。

同氏が率いる与党・社会労働党(PSOE)は4月28日の総選挙(2019年5月7日記事参照)で123議席を獲得し第1党となったが、最大野党・民衆党(PP)と市民党(C’s)、極右新興政党ボクスを中心とする右派ブロックの反対票を覆して政権を樹立するには、急進左派ポデモス党の支持が不可欠だった。

ポデモスが棄権、9月まで再交渉に猶予

PSOEは単独少数政権を望んでいたが、ポデモス党は賛成票を投じる条件としてこれまでのような閣外協力ではなく連立政権を強く迫ったため、PSOEが承諾。しかし、閣僚・高官ポストの配分をめぐり合意形成に至らず、結局、ポデモスは棄権した。他方、独立賛成派のカタルーニャ共和左派(ERC)をはじめとする複数の地域政党は、支持もしくは棄権による間接的支持を表明していた。

憲法の規定では、今後約2カ月にわたり、サンチェス氏または別の候補者を立てて首相信任投票を繰り返すことができる。9月23日までに新首相が選出されない場合は、国王が議会を解散し、11月10日に再選挙が実施されることとなる。

サンチェス首相は投票前の演説で「政権担当経験のないポデモス党に(労働相などの)重要な閣僚ポストを委ねることはできない。第4党にもかかわらず多くの権力を要求し過ぎた」と、連立交渉不調の理由を説明した。一方、ポデモス党のパブロ・イグレシアス書記長は「サンチェス氏はポデモス党を連立相手として尊重し、交渉を続けるべきだ。まだ再選挙を回避するための時間はある」と交渉続行に望みを託した。

直近の世論調査では、与党PSOEが支持を伸ばす一方、ポデモス党やボクス党、急激に右傾化した第3党C’sは伸び悩んでおり、再選挙の場合もPSOEは有利な位置にある。しかし、多党制が定着する中で、単独与党での政権運営はもはや成立しがたく、いずれの政党が勝利しても厳しい連立交渉を迫られるとみられる。

(注)首相候補は信任投票で議席数の過半数の賛成が得られれば選出される。過半数を獲得できない場合は、第1回投票から48時間以内に第2回投票を行い、単純多数、つまり賛成票が反対票を上回れば首相に選出される。今回は、7月23日の第1回と25日の第2回投票の両方で否決された。

(伊藤裕規子)

(スペイン)

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