子供の位置情報把握アプリで世界展開を目指す

(カザフスタン)

タシケント発

2019年09月20日

カザフスタン政府が産業多様化のため設立したスタートアップ支援機関「アスタナ・ハブ」。ここに2018年11月から入居し、GPSを利用して子供の位置情報を(子供が持つ)スマートフォン経由で親に知らせるアプリを開発・販売する「キッズセキュリティー」は、ベンチャーファンドから資金を調達し、米国、ロシア市場に進出を開始した。共同設立者で最高マーケティング責任者(CMO)のアスサット・アシャマノフ氏に話を聞いた(9月9日)。

写真 アスサット・アシャマノフ氏。創設者3人のうち2人がカザフスタン、1人がロシア(サンクトペテルブルク)に在住。イベントで知り合ったのがきっかけという(ジェトロ撮影)

アスサット・アシャマノフ氏。創設者3人のうち2人がカザフスタン、1人がロシア(サンクトペテルブルク)に在住。イベントで知り合ったのがきっかけという(ジェトロ撮影)

(問)スタートアップ設立と米国、ロシア市場進出の経緯について。

(答)銀行勤務から独立し、3人で事業を開始した。2016年に中国からGPS機能付き腕時計を輸入し、親が子供の居場所が分かるアプリを開発した。事業は順調に成長したため、別会社に任せ、今度は(時計ではなく)子供のポケットにあるスマートフォンを経由した位置情報アプリを開発、販売を開始した。低年齢の子供がスマートフォンを持つ時代になった。米国とロシアでは既にアプリへの需要が大きく、進出を決めた。

(問)家族の位置情報を把握するアプリは競争が厳しいのでは。

(答)米国、ロシアの競合アプリを分析し、自社製品の特徴を明確にした。子供の帰宅を知らせる機能、遠隔操作での子供の呼び出し機能、周辺音声の収集などがこのアプリの基本的な機能だが、6~13歳の子供の多くが、所在追跡機能に拒否反応を示すという調査結果がある。そのため、子供が自らアプリを導入するモチベーションを持たせるべく、子供の良い行動(テスト結果が良かった、手伝いをしたなど)で仮想コインがもらえるといった機能や、インタフェースを動物(ペット)にするなど「チルドレン・フレンドリー」の機能を開発中だ。

(問)カザフスタンのスタートアップを取り巻く事業環境は。

(答)エネルギーや製造分野に投資してきた既存の投資家は、超短期(6カ月)で投資資金を回収する手法に慣れており、回収に2~3年必要なスタートアップとの間にギャップがあるのは事実。一方、最近では、地方都市でのスタートアップ支援機関の創設、世界的スタートアップ事業「シードスターツ」の進出など環境整備も進んでいる。

(問)資金調達の状況と今後の展開について。

(答)2017年7月にヌルスルタン市(当時はアスタナ市)から奨励金7,732ドル、2019年9月には国内ファンドから2万ドルを調達した。この資金で米国、英国、ロシアで市場テストを行う。アプリは8カ月で既に1万ダウンロード、600の有料ユーザーとなった(ユーザーの80%はカザフスタン以外)。今後、ブラジル、日本、中国などで25万ドルの追加資金を獲得して規模を拡大し、2020年6月までに2万7,000ユーザー、150万ドルを売り上げることを目標にしている。日本の投資家にも、積極的にコンタクトを取りたい。世界企業まで育てた後、株式を売却するのが最終的なエグジット(出口)だ。

(高橋淳)

(カザフスタン)

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