政府が新しい景気刺激策を発表

(インド)

ニューデリー発

2019年09月04日

インド政府は8月23日、足元で鈍化している経済の成長をテコ入れするため、新しい景気刺激策を発表した。海外投資家の税負担の軽減や、公営銀行への公的資金投入、自動車や住宅の購入を後押しする優遇措置など、複数の支援策を実施する。シタラマン財務相は同日の記者会見で、海外からの投資促進のため、7月5日の2019年度予算案で発表した海外投資家のキャピタルゲインに対する増税策を撤回し、従来どおりの水準に戻すことを明らかにした(表参照)。

表 海外投資家が得たキャピタルゲインに対する税率  

さらに、インド政府は公営銀行に対し、新たに7,000億ルピー(約1兆500億円、1ルピー=約1.5円)の公的資金を投入することで資金の流動性を高めるとともに、販売が低迷している自動車部門や住宅部門などへの信用供与を円滑にし、市場の活性化を促すことにした。自動車ローンや住宅ローンなどの貸出金利を政策金利と直接連動させるよう銀行に促す措置も導入する。インド準備銀行(中央銀行)は2019年だけで政策金利を4回にわたり引き下げており、利下げの恩恵を貸出金利に反映させることで消費者に還元し、新たな需要獲得に結び付けたい考えだ。

自動車部門は、乗用車と商用車の合計新車販売台数が9カ月連続で前年同月の実績を下回っており、景気の足を引っ張っている。背景には、自賠責保険料の引き上げや燃料価格の上昇、ノンバンクによる貸し渋りなど幾つか要因がある。新たな景気刺激策では、複数のテコ入れ策を実施し、販売の早期回復を図る。具体的には、車両の購入や更新時に必要な車両登録料の引き上げを2020年6月まで延期し、顧客の負担を軽減する。2020年3月末までに購入される全ての車両の減価償却率を現行の2倍となる30%に引き上げ、買い替えサイクルを短縮し、中古車市場の活性化も促す。さらに、自動車市場の需要を高めるため、インド政府は老朽化した公用車の買い替えを容認する方針を明らかにした。これまでは、公用車の買い替えは禁じられており、老朽化した場合はレンタカーで代替していた。

インド工業連盟(CII)のチャンドラジット・バナルジー事務局長は「インド経済の重大な懸念事項に対処しており、十分に検討された刺激策だ」と前向きに評価した(「ビジネス・スタンダード」紙、8月26日)。

(宇都宮秀夫)

(インド)

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